その経理でほんとうに大丈夫ですか? その1

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固定費はできるだけ抑える中小企業には大企業と違って、財務部門がありません。
とはいえ、経理部門がその役目を兼務することはできないため、社長の頭のなかは、つねに曖昧な数字で満たされ、不安になっています。
中小企業の経理部門は、伝票整理や記帳などの会計業務以外の、お金に関する業務にタッチしていないため、中小企業では財務管理上の問題点が山積しています。

まず取り組むべきは経理部の新たな仕組みづくり

販売や仕入、外注などの取引によって発生するものについて、自身が仕訳などに携わったものについては、経理部員は理解することが可能です。
ただし、「資金全体の動き」については、社長以外が把握していないのが現実です。

一方で「財務管理を経理に任せよう」と社長が思ったとしても、実際の財務管理は、経理業務以上に難しいため、任せられる人材がいないというのが実情です。

財務管理担当者のメインの仕事に、予算編成がありますが、中小企業の経理担当者は、自社の売上や利益から「どの支払いを」「どのような支払方法にして、月々の出費をいくらに抑えるか」といった「支出」面の予算編成を立てることが難しい傾向にあります。

なぜなら、予算編成には、経営者的感覚が必要だからです。

たとえば、大型の設備機械を導入する計画があったとします。
するとそれを、リースにするのか、現金一括で支払うのか、銀行借入をして支払うのか、といった判断が必要になります。

経営者にとってはさほど難しくない判断かもしれません。
経営者は、経理マンと違って、経営上大きな「お金」が動く内容をある程度シミュレートできるからです。
毎月の固定費、期中に使う広告宣伝費、今後の売上予測、別の投資計画も加味して、おおよその最適な判断がくだせます。

その一方で、これほどの視野で予算組みを考えることができる経理担当者は、皆様のまわりにどれほどいるでしょうか。
仮に、優秀な経理担当者がいて、その判断ができたとしても、最後は経営者の決済が必要となるため、自分から積極的に関わっていこうという姿勢はもちにくいでしょう。

ですから、皆様の会社でまず取り組むべきは経理部の新たな仕組みづくりです。

たとえば、キャッシュフロー計算書。
中小企業で、これを経営者に提出している経理担当者にはまず出会えません。
経理担当者が資金繰りを理解するのと同時に、キャッシュフロー計算書のように、経営者が判断しやすい材料を揃え、提出する体制を整えていきましょう。

間接業務にお金をかけてはいけない

財務管理以外にも、中小企業の経理部門が抱える本質的な問題があります。

それは、経理部門自体が、間接業務であることです。

ご存じのように、経理部門自体は売上に直接貢献しない部門です。
さらには、管理部門として人をおくため、人件費は年功序列になり、そのコストが年々上がっていってしまいます。
コストが上がるにもかかわらず、やっていることは会計処理といったルーティンワークが多いため、慣れればアルバイトができる仕事内容も含まれます。
経理担当者に高い給料を支払いながら、アルバイトができる仕事もさせているようでは、生産性の高い会社経営が行われているとはいえません。

なぜ経理のような間接業務にお金をかけてはいけないのでしょうか。
それは間接業務にかかる経費は、ほぼすべて固定費となってしまうからです。

会社経営における経費は、大きく変動費と固定費の二つに分けられます。

簡単に言いますと、変動費とは、売上に比例して増減する経費のことで、仕入れ材料費、外注費などがこれにあたります。

固定費とは、売上に関係なく一定の割合で発生する経費のこと、事務所の光熱費、電話代などです。
会社の利益というのは、固定費を下げ、損益分岐点(利益を出すために必要な最低売上額の水準)を下げると大幅に増えていきます。
反対に固定費が上がると、売上が増えても損益分岐点をなかなか超えることができず、いつまでたっても会社は儲かりません。
皆様は、次のような経営者仲間の愚痴を聞いたことはありませんか。

「会社が前にもまして忙しく、人が増えて給料の支払いがたいへんだ」
「売上は倍になったけど、利益が変わらないんだよ」

もうおわかりだと思います。
これらの"症状"は、固定費が多い会社に特有のものです。

皆様の会社の固定費は何でしょうか。
家賃、水道光熱費、経理担当の人件費などいろいろあると思います。
一度すべての固定費を棚卸して、1円でも安くできないか検討してみてください。
固定費を正確に計算することができれば、資金繰りの予測がより正確になるはずです。

固定費はできるだけ抑える

経理をブラックボックスにしてはいけない

経理部門の他の課題をご紹介します。
人は誰でも、難しそうで理解しにくいことに、積極的にチャレンジしていこうとは思いません。
たとえば、パソコンのなかにCPUと呼ばれる心臓部分があり、一般にブラックボックスと呼ばれています。
ここで、どのようにデータが入出力され、情報処理が行われているのかは、専門家以外誰も知りませんし、調べようとはしないでしょう。

皆、パソコンが動いてさえいたらそれでいいと思っているからです。
ですがもし、会社のお金を扱う、金庫番である経理がブラックボックス化していたらどうでしょうか。

機能しているうちはいいのですが、何かトラブルなどがあって、機能しなくなったときは大問題です。
会社の信用問題に発展してしまうでしょう。

とくに会社を倒産させる経営者の多くは、積極的に、経理に関わり合いをもとうとしていない人が多いように感じます。
「数字のことはわからないから…」
という言い訳をして、経理に対するチェックを放棄しているのです。
また、創業当初、社長自ら経理をやっていた会社でも、規模が大きくなってくると、経理を人に任せてしまうことが多くなります。

すると、その経理担当者が
「経理というのは、ひじょうに高度な専門職だ」
「伝票の仕訳は、できるかぎり正確にすべきだ」
「会社の手持ち現金は、毎日1円たりとも間違ってはいけない」
と思い込んで、そのためにじつに複雑で、本人しか理解できない方法で、業務をこなし、ブラックボックス化していくことがよく起こります。

営業や商品開発、販売などに対して、社員に積極的にかかわっていく姿勢をみせている社長でも、経理となるとまったく正反対の、消極的な姿勢になってしまうのは、仕方がないことだと思います。
そうしたことから、いったんブラックボックス化してしまうと、誰も確認しない業務になってしまうため、その経理担当者は自分が管理しやすいように、長い年月をかけて「あれをやったほうがいい」「これをやったほうがいい」と複雑で面倒な、管理帳票などを作成したり、報告書を作成したりします。
さらには、自分だけがわかる独自の経理ルールや、本来であればマニュアルがないとわからない難しいことを、マニュアルもなく運営してしまうようになります。

これを恐れた社長さんが経理担当に
「あなたの日常の経理業務をすべて棚卸して、改善点を見つけ報告するように」
と指示しても、担当者は、普段やっていることが当たり前すぎて定型的にまとめられなかったり、経営者がちんぷんかんぷんな業務フローができあがったりします。
そして当人には悪気はありません。

業務のブラックボックス化は見方を変えれば、情報漏洩を防げるというメリットがありますが、その一方で、担当者が仕事を独占し、しがみつくことによるコスト高や、不正行為にもつながります。

「仕訳ってどうするんだ」
「貸方、借方ってどういう意味なんだ」
経理がわからない社長さんは、そのような専門用語を聞いただけで、敬遠してしまいがちですが、じつは、税理士などの専門家から見れば、中小企業の経理は、ほぼどこの会社でも同じであり、標準化・マニュアル化しやすい内容ばかりです。

経理事務を大まかに分けると、次の三つのシンプルな作業にまとめることができます。

1.請求書、領収書、給与の一覧表といった資料を集める、または作成する
2.それらのデータを会計ソフトに入力する
3.残高を照合する

この三つを行えば、それで終了です。
いったん経理業務の棚卸に成功すると、簿記の知識をまったくもたないアルバイトでも担当できる業務が明確になります。
社長は、経理をブラックボックス化してはいけないのです。

 

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