その経理でほんとうに大丈夫ですか? その2

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その経理でほんとうに大丈夫ですか? その2営業職に繁忙期と、非繁忙期があるのと同様、経理職にも、忙しい時期と比較的時間に余裕がある時期があります。
経理職が忙しい時期は、月末月初です。
取引先に対して「末締め翌月末払い」のような支払い方法をとっている会社であれば、その前後に多くの支払い業務をこなさなければなりません。

また、自社が顧客に対して発行した請求書の請求金額が、振り込まれているかどうかの消し込み作業も忙しくなります。

経理職の繁忙期と非繁忙期

一般的な会社の支払いルールは、「25日締めの5日払い」「月末締めの10日払い」というようになっているため、月末に業務が集中します。
さらに、月次決算書を作成している会社では、月初の5日、10日には経営陣に対して収支を報告しなければならず、月初に時間をとられることになります。

では、月中はどうでしょうか。
じつは、日々の小口現金の管理や、小さな金額の領収書、営業社員の交通費の精算などがメインのため、比較的時間に余裕があります。
つまり、経理というのは、月末月初は猫の手も借りたいほどの忙しさになるけれども、月中はそうでもなく、アイドルタイムが多いという職種なのです。
ですが、経理担当者にそのことを問いただしても、誰も認めようとはしないでしょう。

「月末月初にまとめきれなかった領収書を部署ごとに分け、ファイリングしています」
「月次決算のため、月初におおまかに仕訳していた部分を、正確にやりなおしています」
と言う人が普通です。
そう言われると社長さんはスゴスゴと引き下がってしまうでしょう(ほんとうは、いったん精算した領収書などなかなか見返さないものです。保管は必ずするにせよ、丁寧なファイリングにどれほどの必要性があるかは、会社によってまちまちでしょう)。

間接業務に対して、アイドルタイムがあるというのは、必要以上のコストを払い続けていることになります。
見直し対象と考えるのが自然でしょう。

採用&教育にコストと時間がかかる

一昔前は、多くの学生が、高校なら商業科、大学では経営学部や商学部へ進み、簿記を勉強した人が、一般企業に経理として入社を希望していました。
そのため、経理職を募集しても、比較的いい人材を、苦労することなく採用できていました。

ですが、現在、大学は学生の人気上昇のため「グローバル○○学部」「国際○○学部」というような学部名をつけ、そこに学生が集まる傾向があります。

そのような状況も少なからず影響してか、簿記を勉強している学生がかなり減ったように感じています。
また、たとえ経理を志望する人材がいたとしても、大手にとられてしまい、中小企業はなかなか採用ができません。
さらに、近年のアベノミクスや東京オリンピックへの期待により、景気が上向きつつあるため、就転職市場は現在、売り手市場になっています。

いま、学生の採用活動の中心は、インターネットになっています。
学生や転職希望者がよく訪れる、有名なサイトに百万円以上の費用を支払って求人広告を出さなければ、いい人材を採用することはいままで以上に難しくなっています。

いい人材を探すには、採用自体が難しく、非常に高コストがかかってしまうのです。

仮に人材を採用できたとしましょう。
ですが、皆さんの会社の経理部門が、省力化されておらず、マニュアルもなく、専門職の社員が独自の方法でこなしているような会社であれば、その方法を一通り覚えるのに、何カ月もかかったりします。
採用してからの教育にも、一苦労あるというわけです。

何度も言いますが、それらの時間的、金銭的なコストはあくまでも直接的な会社の利益につながらない、間接的な経費となり、会社をじわじわと圧迫してしまうのです。

7割以上の中小企業は経理担当者が一人しかいない

中小企業の経理部門が潜在的にかかえる問題点の中で、ある意味最も危険度が高いのは、経理担当者が辞めたときに起こること、です。

考えてみてください。
いまの経理担当者が、病気になって長期の休養を余儀なくされるとしたらどうでしょうか。
経理担当者が女性だとして、その女性の夫が転勤になり、自分もついていかせてもらいますと、申し出てきたらどうでしょうか。
そういうことはぜったいないと、皆様は断言できないと思います。
そして、その経理担当者が辞めた後に気づくこと…それは、代わりのきく社員がいないという事実です。

多くの会社では、創業時は比較的経理業務の量が少なかったと思います。
ですから、社長さん自ら、業務終了後に、経理事務をされていたことでしょう。

その後、会社が成長期、発展期にはいると、社長は営業や管理に忙しくなりますから、そこで経理担当者を雇って、仕事を任せていたのではないでしょうか。

また図のように、約70%もの中小企業では、経理担当者が一人以下という現状がありますから、経理担当者が辞めると、その前の担当者、つまり社長が担当せざるを得なくなる、というわけです。

営業マンが一人ぬけた、アルバイトの販売員が辞めたという場合は、何人か抱えている同一の職種のメンバーに奮起してもらい、残業代を払って働いてもらえば一応のカバーはできるはずで、仕事に大きな影響は出ないはずです。
しかし、経理の場合、急ぎ募集をかけ、無事採用できたとしても、新たな担当者が、前任者のスキルに達するまでは、社長がつきっきりで面倒を見なくてはいけません。
引き継ぎには、想像以上に手間がかかることも覚悟しておく必要はあるでしょう。

7割の会社では経理担当者は1人以下

財務管理ができる人材を採れない

多くの経営者が経理担当者に求める条件としては「即戦力」を挙げることが多いようです。

仮に、採用面接などで、
「前職でも経理をしていたので数字には強い」
「自分は簿記○級の資格をもっている。税務に関して役に立てる」
とアピールしてくる応募者がいたとしましょう。

このような「経理」に意欲的な方は、経理事務といった正確性の高い仕事をコツコツ着実にスピーディーにこなしていくことに喜びを感じやすい傾向にあります。
とすると、経営者のように、不確実性の高い将来目標を現実化するために、先の見通しが立ちにくい売上予測を前提に資金繰りを考えるといった感覚を理解しにくい傾向にあります。

結果、経営者と同レベルの能力と判断力が求められる財務担当者にまで育てあげるには、相当の年月とコストをかけなければならないと覚悟しておいたほうがいいでしょう。

「そんなことはない。我が社の経理担当者は、希望者10名のなかから一人を選んだ。優秀そうだから即戦力として期待している」
と反論される方がいるかもしれません。

それでは、その担当者に次の質問をしてみてください。
「仮に来月から、売上が前年同月比で30%減になったと仮定します。同じ状態が続いても、いままで同様の経費を支払い会社が倒産せずに継続させるには、何カ月が上限でしょうか。現時点での月次決算書から、売掛金、借入状況、人件費や材料費などの経費を勘案した上で、明日教えてもらえますか」

この質問に答えられる経理担当者は、ほとんどいないでしょう。
まともな答えが返ってくることは、おそらく期待できません。
答えを出そうと頑張ってみても、そもそも、その基礎となる財務情報を普段から準備していないため、急に尋ねられても、答えを出せるはずがありません。
なんとか努力して答えを出してみようとする人なら、まだましなほうで、
「それは経営者が考えることです。こんな質問は、経理担当者にするものではありません」
と、自分の仕事ではないと放棄して、何もしようとしない人もいるでしょう。

現在は好景気による売り手市場の景況が強く、転職を希望する優秀な経理マンは、大手企業が高待遇で採用してしまうという状況があります。
となると、中小企業の経理を志望してくる人は、大企業に採用されなかった人となり、必然的に彼らより優秀でない確率は高まるのです。

中小企業の経理に優秀な人材を採用するというのは、もう一度不景気となり、大手企業が採用を渋らないかぎり、なかなか難しいのが現状といえるでしょう。

 

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