不動産所得の青色申告|知る人ぞ知る経費の7つの項目と申告の注意点

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アパートやマンションなどを所有して行う賃貸住宅経営。賃貸料などの不動産所得にも各種の税金がかかります。そうした中で、税制上のメリットから「青色申告」の適用を受けようとされている事業主の皆さまも多いのではないでしょうか。

本記事では、不動産所得に関して青色申告をするメリットと必要条件を整理した上で、具体的にどのような支出が経費になるのか、特に、しばしば問題になる「修繕費」はどこまで経費に計上できるのかを解説していきます。

1.青色申告とは?

青色申告とは、税務署の承認を受け、所定の方式により毎日の取引を正確に帳簿へ記録し、それに基づいて所得を申告する制度です。
所得税の税額計算のベースとなる「課税所得」は、

課税所得 (収入 必要経費+ その他の所得)- 各種所得控除

という計算式で求められます。青色申告にすることで、それ以外の事業者に適用される「白色申告」に比べて

・必要経費として認められる科目数・金額の増加
・所得控除の科目数・金額の増加、

というメリットがあります。

2.不動産所得について青色申告をするメリットは?

2-1.65万円の青色申告特別控除

税額計算のベースとなる課税所得から、65万円を差し引くことができます。
これを青色申告特別控除といいます。

ただし、青色申告特別控除前の所得金額(=収入-経費-各種引当金・準備金等)が、上記の額より少ない場合は、その所得金額=控除額となります。
例えば所得金額が55万円の場合、青色申告特別控除額も55万円となります。

2-2.赤字の際の3年間繰り越し

不動産所得で赤字が発生し、その後3年以内に黒字転換した場合、黒字になった年の課税所得から赤字分を差し引くことができます。
建物の大規模な修繕などで、一時的に赤字が出た時に役立ちます。

2-3.少額減価償却資産の特例

30万円未満の減価償却資産を取得した場合、取得した事業年度において全額を経費とし、課税所得から差し引くことができます。なお、年度途中に取得した30万円未満の減価償却資産の場合も、月割りせずに全額を経費とすることができます。

2-4.家族を従業員にした場合の専従者給与控除

事業主の家族を従業員として雇用する場合、その給与を必要経費として課税所得から差し引くことができます。
(※白色申告の場合は、配偶者は86万円、その他の親族は一人につき50万円に限り課税所得から差し引かれます。)
これを「専従者給与」といい、専従者には、同居または生計を一にしている15歳以上の配偶者や親、祖父母、子供などが含まれます。

3.青色申告を受けられる条件

3-1.申請書の提出

・青色申告を始めたい場合は、申告をしようとする年の3月15日までに、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。

管轄の税務署を調べる 国税庁ホームページ

で入手できるほか、国税庁のホームページからダウンロードしていただけます。

所得税の青色申告承認申請書

3-2.複式簿記での記帳

・青色申告では、売上や経費を記入した損益計算書、および年度の初めと終わりの資産を記入した貸借対照表の両方を毎年作成し、決算書として3月15日までに提出する必要があります。

決算書は国税庁のホームページからダウンロードしていただけます。

所得税青色申告決算書

決算書の書き方

また、帳簿や受け取った請求書・領収書などを5年間または7年間保存する義務が発生します。

3-3.事業的規模での貸付

法令では、不動産所得の申告に関し、貸付規模により異なる取り扱いを定めています。具体的には、

  • 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10室以上であること
  • 独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること

のいずれかを満たす規模を「事業的規模」と呼び、事業的規模に達しない場合は専従者給与控除が認められず、青色申告特別控除も10万円までに限られることとなっています。

4.不動産所得から差し引くべき経費とは?

4-1.減価償却費

建物については、その減価償却費を、耐用期間において毎年経費に計上できます。
少額資産の減価償却費については、以下のようにして経費に計上します。

  • 10万円未満の資産:取得した年で全額経費に計上します。
  • 10万円以上20万円未満の資産:取得から3年間で3分の1ずつ均等に計上します。
  • 30万円未満の資産:青色申告に限り、年間300万円までの範囲であれば一括で計上できます。

4-2.修繕費

建物、建物附属設備などの資産の修繕費は、経費に計上されます。
具体的にどのような支出が修繕費として経費に計上されるのかは、後ほど詳しく解説いたします。

4-3.損害保険料

建物の火災保険料や地震保険料は、経費に計上できます。なお、保険料を前払いしている場合には、そのうちの当年度分しか必要経費になりません。
また、自宅や店舗併用住宅のうち賃貸事業用でない部分は、経費になりません。

4-4.租税公課

  • 土地・建物に対する固定資産税
  • 賃貸による儲けに課される事業税
  • 賃貸物件を取得した際に課される不動産取得税、登録免許税
  • その他、自動車税や印紙税

など、不動産貸付業務に関連して納付する現金は、経費として認められます。
ただし、所得税や住民税は、経費になりません。

4-5.人件費

不動産賃貸業務に関して従業員に支払っている給料は、経費に計上されます。
また、上述の通り、青色申告の適用を受けた場合は、事業主の家族を従業員とする際、その給与を経費とすることができます。

4-6.借入金利息

建物等の取得にあたり金融機関から受け取った借入金の利息は、経費に計上されます。
ただし、借入金の返済額のうち、元本に相当する部分は経費になりません。
また、利息のうち開業前に支払うものも、経費に算入することはできません。

4-7.管理費

入居者の募集広告費用や仲介業者に支払う手数料、専門業者に物件の管理を任せている場合の費用など、資産や入居者の管理費用は経費に算入できます。

5.注意点:修繕費と資本的支出の違い

前述の「修繕費」として認められる支出は、通常の維持管理費用、または毀損した固定資産の原状回復費用に限られます。
修繕目的であっても、固定資産の価値を高め、またはその耐久性を増すことになる部分は「資本的支出」と呼ばれ、経費に算入することができません。
具体的には、

  • 建物の避難階段など、物理的に付け加えた部分の金額
  • 用途変更のための模様替えなど、改造または改装に直接要した金額
  • 機械の部分品を特に品質または性能の高いものに取り替えた場合で、通常の取り替えの部分を超える金額

などが資本的支出に含まれます。

なお、おおむね3年以内の期間を周期として修繕が行われるとき、または金額が20万円未満の修繕であるときは、経費に算入することができます。
また、上記の基準に照らしても、修繕費か資本的支出かが不明確である場合は、その金額が

  • 60万円未満
  • 修繕した資産の前年末における取得価額の10%相当額以下

のいずれかを満たせば、修繕費として認められます。

まとめ

不動産を所有して賃貸事業を営まれる方にとって、青色申告は費用面でさまざまなメリットをもたらし、また大規模な出費の可能性に備える上でも効果のある制度だと言えます。
しかし、微妙な税務判断が必要な不動産特有の支出項目が多く存在していることも事実です。
専門家にも相談なさった上で、青色申告の利点を活用した事業運営をされることをおすすめします。

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