採用前に知っておきたい雇用契約の基本 その1

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採用前に知っておきたい雇用契約の基本 その1

人を雇おうと決断したその瞬間から、会社は起業直後の第一ステージから、第二ステージに移ります。

人を雇い会社を発展させていくという第二ステージで成功するためには、第一ステージとは少し違ったものの見方、労働契約上の法律的知識、助成金申請などの基礎を、しっかりと勉強して身につけておかねばなりません。

給与額の取り決め」「就業規則の作成」「健康保険、厚生年金の加入」「労災保険、雇用保険の加入」など、経営者として最低限の知識をもっておかないと、的外れなことをしてしまったり経済的損失を被ったりする可能性があるのです。

従業員を雇うということ

従業員を雇ういうことは、「①給与以外の費用」「②労使トラブル」の2つが発生します。

人を雇ったとしても月給を支払えばそれで終わりだ─。
このように想像している経営者はおそらく多いでしょう。
単純に、月給20万円で雇用する場合、20万円×12カ月=240万円となり、「自分以外の人件費が240万円分、増えるぐらいに思っておけばいい」と予想するのが普通です。
しかし、これはあくまで「月給」だけの話です。

通勤手当、社会保険料、労働保険料まで含めればどうでしょうか。
正社員1名(20代)を雇うシミュレーション(平成29年4月/東京/一般業種で試算)をしてみましょう。

月給20万円、通勤手当1万円だと仮定すると、おおよそ健康保険料9,910円、厚生年金保険料1万8,182円、雇用保険料1,260円、労災保険料630円となり、合計23万9,982円となります。
月給が20万円でも、現実は239,982円−200,000円=39,982円となり、約3万9,982円の負担が生じているのです。

さらに、賞与を夏冬で月給4カ月分と仮定すると年額で80万円の負担増となります。
ボーナスにも健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料の支払い義務が生じ、約10万円増加しますから、すべて合計すると約90万円となります。
結果、総計は約380万円となり、月給だけの合計額240万円と比較すると、驚くほど増えていることがわかります
一般的に「従業員は経営者より立場が弱い」と考えられており、従業員はさまざまな法律により「手厚く保護」されています。
もちろん、従業員が法律に保護されるのは喜ばしいことです。

しかしながら、社会情勢変化のスピードが速くなり、法改正についていけない経営者が増える一方で、情報をたくさん持っている労働者が増えており、労使トラブルの件数が年を追うごとに増加しているのです。
それは、なぜでしょうか。

第一に、終身雇用制度が崩壊し、転職市場が活性化したことが理由に挙げられます。
新卒でも中途採用でも「いまの会社が嫌になったら、別の会社を探せばいい」と若者の意識が変化してきており、多額の費用を払って採用しても、すぐに辞めてしまうのです。
円満退社ならまだいいのですが、問題は何かに不満があって辞めてしまった場合です。
たとえば、「定時は18時なのに、平日に会社を出るのはだいたい21時頃だったな。それにタイムカードは実際に帰る時間よりも先に“押せ”と命令されていた…」
などと思い出し、知人に相談すると、「それはサービス残業だな。訴えれば勝てるよ」とアドバイスをされ、実際に弁護士を通じて残業代の支払いを訴える人が増えています。

労働基準法には、使用者が時間外労働などを強いた場合、割増賃金を支払うことが義務づけられており、違反すれば「6カ月以下の懲役」「30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。
さらに、残業代は2年間さかのぼって請求できるのです。
不法行為と認定されれば、支払わなくてはならない残業代は3年分となります

時給計算で2000円の従業員が、平日8時間労働をしたあと、平均で3時間のサービ
ス残業を月20日ほどしていたことを、訴えるとどうなるでしょうか。時間外労働は割増率が1.25倍となるため、
2000円×1.25(割増率)×3時間×20日間×24カ月(2年間)=360万円
となります。
従業員が辞めるだけでもたいへんなのに、そのうえ360万円もの金額を請求されれば、経営者はたまったものではありません。

このようなケースは実際によく起こっており、いま現在も元従業員から訴えられた企業には、残業代を支払うようにという判決がおりることが多いのです。
ほかにも、社長が忘年会で女性従業員の肩を抱いたり、帰り際にタクシーに乗り込もうとしただけで損害賠償請求をされ、慰謝料数十万円の支払いを命じられたことや、
「不景気のため給料を無理矢理下げられたが、それは不当である。差額分を支払ってほしい」
「同僚の社員から陰湿ないじめを受け、鬱うつになった。会社はそれを知っていながら放置していた。慰謝料を支払え」
などと訴えられるといった事例が増えています。

「知りませんでした」という言い訳は通りません
経営者として正しい知識をもって従業員を雇用できていないと、予想外の事態に遭遇することになってしまうのです。

相談件数の推移

従業員の雇用形態を知る

一概に「人を雇う」といってもさまざまな形態があり、つぎの6つに分けられます。
これらの特徴を知ることで、金銭的な負担や労使トラブルを避け、いまの会社にとって、どの雇用形態を選択するのがベストなのかを判断できます。

①正社員
②パートタイマー
③アルバイト    
④契約社員
⑤派遣社員   
⑥業務委託

このように列挙すると、
「パートタイマーとアルバイトの違いは何か」
「契約社員と派遣社員は、いったい何が違うのか」
などと、疑問に思われることでしょう。
細かい違いはありますが、これらの雇用形態は大きく2つに分類できます。

グループA
正社員
パートタイマー
アルバイト
契約社員

グループB
派遣社員
業務委託

グループAは、あなたの会社と労働契約が「あり」ます。
グループBは、あなたの会社と労働契約が「ありません」。

ですから、グループAの雇用形態を選択すると、それらの従業員は、
「あなたからの指示を受けて動き」
「働いた対価としての給与を、あなたの会社から直接受け取る」
ことになります。
また、グループAでは、会社に各種保険の負担義務が生じます。
グループBでは、会社に各種保険の負担義務は生じません。
社会保険料を支払ってでも、従業員を安心させ適度な福利厚生を与え、がんばって働いてもらいたいと思うのであれば、グループAを選択しましょう。
反対に社会保険などの各種保険料が高額で、のちのち経営に対する負担が増してくると思うならば、無理にグループAの雇用形態をとる必要はありません。

正社員とパートタイマー&アルバイトの違い

あなたが会社の経営者ならば、グループAの従業員はすべて、“社会保険に加入”させなければいけません。
ですから、「アルバイトやパートタイマーとして雇えば、社会保険を会社が支払わなくてよい」という考えをもっていたのであれば、まずはそれを正すべきです。
違う点といえば、ボーナスや退職金を出すかどうか、という点などになります。

しかし、そのような条件面よりも大切なことがあります。
それは、従業員とあなたの双方が「未来をどのように考えているか」です。
これから採用しようという従業員との面接時に、「自分自身が責任と裁量をもって働き、この会社を伸ばしていきたい」と前向きで積極的な姿勢が感じられるのであれば、正社員として採用すればいいですし、「家族の事情などにより働く時間が限られている」「子育ての時間、プライベートの時間を大切にしたい」という人は、アルバイトやパートタイマーとして雇用すればいいでしょう。

派遣社員、業務委託のデメリット

「従業員を社会保険に加入させるのは、半額が経費になるとはいえ起業直後は負担がたいへんだと聞いている。だから人を雇うのは、グループBがいい」
という方がいると思います。
この考えを否定はしませんが、ある調査によると「派遣社員の多くが正社員を希望している」というデータがあります。
また、労働契約法、労働者派遣法が改正され、同一の職場での契約が3年を超える派遣社員には、派遣元は「派遣先への直接雇用の依頼」「派遣元での無期雇用」などの措置をとることが義務づけられました。

もしあなたが派遣社員のことを気に入ったとしても、その雇用形態では3年しか働いてもらえませんし、その後、直接雇用などに転換したら結局、社会保険は払うことになります。
さらに、もし契約社員として直接雇用した場合、有期雇用は5年までと定められていますから、合計8年もの間、その従業員は、あなたの会社からの待遇について、「正社員になりたいのに、ならせてもらえない」という不満を持ち続けることになります。
それなら最初から正社員として雇用すれば、待遇の不満なく、入社時からやる気を出して働き、会社に貢献してくれることでしょう。

あなたがこれから採用する人物をどのように成長させていきたいのか、従業員はどのような雇用形態を希望しているのか、両方が合致する雇用形態をとることをおすすめします。

6つの雇用形態の特徴比較一覧

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