採用前の準備~労働時間・休日・休暇/服務規程をどのように決めるか~

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採用前の準備~労働時間・休日・休暇をどのように決めるか~労働時間は、会社が物販やサービス業をしている場合であれば、店の開店時間より前後を少し長くしたぐらいに設定しておけば、当面は問題ないでしょう。
ただし、経営者が労働時間を設定するときに気をつけるべきことが1つあります。
それは、「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いです。

所定労働時間と法定労働時間とは

・所定労働時間→会社で独自に決めた労働時間
・法定労働時間→労働基準法により定められた労働時間
(1週間40時間以内、1日8時間以内)

じつは、この所定労働時間と法定労働時間の定義の違いをよく理解すれば、残業代の過剰支払いを防げることがあります。
仮に皆さんの会社の所定労働時間が7時間だとすれば、法定労働時間よりも1時間短いことになります。
この1時間の残業については、法定労働時間内の残業ということになります。

残業代は一律1.25倍、と思っている経営者は意外に多いものですが、法定労働時間内の残業については、1.25倍の割増賃金ではなく、通常の時間単価で済むのです。人件費を必要以上に支払うことは、会社の経営をボディブローのように圧迫していきます。
経営者は、人件費の管理に対して、人一倍注意を払い、無駄を省きましょう。

休日の設定方法人を雇うとき、休日はどのように設定すればいいのでしょうか。

なんとなく「みんなそうだから、週休2日でいいか」と安易に決めていないでしょうか。
法律では、休日は毎週少なくとも1日、もしくは、4週を通して4日となっており、これを「法定休日」といいます。
また法定休日以外の休日を、「所定休日」といいます。

皆さんもご存じかもしれませんが、休日出勤の休日割増は1.35倍です。
じつはこの1.35倍は法定休日の場合にのみ、適用されるのです。
所定休日に働いた場合は、時間外労働とみなされ、1.25倍が適用されます。
つまり、会社が週休2日制のとき、日曜日を安易に「法定休日とする」という文言を就業規則に書いてはいけない、ということです。
そのように記載してしまうと、たとえ土曜日に休んでいたとしても、日曜日に出勤すると割増率が1.35倍となってしまうからです。
法定休日の曜日を特定する必要はない、と覚えておきましょう。

週休日に出勤した場合の賃金の違い

休日と休暇、振替休日と代休の違い

休日とは、就業規則によって、労働義務が発生しない日です。
休暇とは、本来働かねばならない日に、従業員の申し出により、労働を免除する日です。

先ほどの論理同様、休日出勤して働くと割増賃金が発生しますが、休暇日を取り崩して働いた場合は所定労働時間という認識になり、割増賃金は発生しません。
もう1つ、振替休日と代休の違いについても理解しておきましょう。
厚生労働省はつぎのように定義しています。

振替休日とは、予め休日と定められていた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日とすること

要は、予め休日と定められた日が労働日となり、そのかわりとして振り替えられた日が「休日」となります。
従って、もともとの休日に労働させた日については「休日労働」とはならず、休日労働に対する割増賃金の支払義務も発生しないのです。

代休とは、休日労働が行われた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みとするものであって、前もって休日を振り替えたことにはなりません。
従って、休日労働分の割増賃金を支払う必要があるのです。

このように説明すると、
「では従業員が働いた休日は、代休ではなくて振替休日扱いにすればいい」
と思われるかもしれませんが、単純にそうはいきません。

振替休日とするには、就業規則にその旨を定める、当初の休日は労働日になる、事前に振替日を指定する、本人に前日までに予告する、という手続きが必要になります。

月単位の変形労働時間制を採用しよう

労働時間や休日を設定するには、意外と多くの知識が必要だとおわかりいただけたでしょう。
それでも、「自分の会社は月初が暇で、月末だけが忙しい。月末数日は、どうしても残業代の負担が大きくて困っている」
という方もいるはずです。

このような人は「変形労働時間制」の導入を検討してみましょう。

もし皆さんの会社の1日の所定労働時間が8時間より短かったり、店舗の営業時間や工場の操業時間が8時間より長く、シフト制などを用いているのであれば、検討してみる価値はあります。

変形労働時間制には1週間単位、月単位、年単位の3つがあります。
ここでは導入しやすいとされている月単位のものについて説明します。
月単位の変形労働時間制とは、1カ月の期間で労働時間を調整、平均して、週40時間にする方法です。
たとえば、月末5日間は、毎月セール特売日と決めており、必ず残業が2時間ずつ発生しているというお店であれば、

2時間×5日=10時間

毎月10時間分の割増賃金が発生していることになります。
このような場合、月末以外の日を所定労働時間より1時間短くし、7時間とすることで、無駄な残業代を減らせます。

ただし、この制度を活用するためには就業規則にその旨を記載しておかねばいけません。
また、変形する期間に入る前に、従業員には事前に「どの日に何時間働くか」などを知らせておく必要がありますので注意してください。

1カ月単位の変型労働時間制の場合

服務規程のつくり方

服務規程とは簡単に言えば、就業規則で説明しきれなかった補足事項のことです。
なぜ補足事項が必要になるのかというと、就業規則は、労働基準法により指定された内容を核として、最低限必要な事項のみでつくられるのが一般的だからです。
「事業主側」が就業規則だけで従業員を雇い、会社を上手に経営していくには、活用しにくいのです。

たとえば私達の住む日本では、憲法、法律、条例などがあります。
憲法はもちろん大切ではありますが、それだけで日本国を運営していくことはできません。

主権は国民にある─というように、あまりに「基本的なこと、当たり前のこと」に限定して書かれているからです。
国を運営するには、刑法や民法などの六法や、地域ごとの違いに対応するため地方自治体が独自に定める条令がないと、運営はうまくいきません。
就業規則と服務規程にも同じ関係性がある、というわけです。

ここでは、皆さんが人を雇う際に実際に起こりうるケースに限定して、注意すべきポイントを7つ説明していきます。

①出退勤時間について
たとえば就業規則で業務開始時間を9時と決めていたとします。
その場合、従業員が毎日8時59分に駆け込むように出勤していたとしても注意することはできません。
「従業員は、始業時刻にただちに業務に着手できるようにする」などと服務規程を定めておきましょう。

②遅刻や早退、欠勤について
遅刻しそうになると、メールやLINEで連絡をして「事前に連絡した」という既成事実をつくろうとする社員が現れたとします。
それをよしとしないなら、「遅刻や早退、病気、交通事情などにより、やむを得ない理由があるときは、自ら電話で会社に連絡しなければいけない」と定めておきましょう。

③社用パソコンの使用方法について
事務職を採用する場合、パソコンで作業をすることになります。
すると、あなたがいない間に、私的にインターネットを閲覧したり、メールをやりとりしたり、プリントアウトする従業員がでてくる可能性があります。
ですので、「会社が必要と認めた場合は、アクセスログや電子メールの送受信について、データを検閲することがある」と定めておきましょう。
また、顧客の個人情報や技術情報などを持ち出さない旨も定めておく必要があります。

④通勤手段について
マイカー通勤(2輪を含む)を許可する場合は、許可申請書を用意し、本人に提出させて、会社の許可を得てから通勤してもらうようにしましょう。
事故を起こした場合、被害者から会社に責任を問われる場合がありますから、「マイカー通勤を希望するものは、運転免許証、任意保険証、車検証、それぞれの写しを許可申請書とともに提出しなければならない」と定めておきましょう。

⑤二重就業の禁止について
就業規則により、二重就業禁止を定めていても、個人的な事情で「会社からの給料だけでは苦しいから……」と、早朝に新聞配達をしたり、深夜のコンビニでアルバイトをしたりする人が出てくる可能性があります。
ただし、憲法には職業選択の自由が定められていますから、勤務時間外の活動を、会社が完全に止めることはできません。
そこで、二重就業を「原則禁止」と定めたうえで、「希望する場合は、事前に会社に申告し、個々の事情に鑑みて会社が判断する」と柔軟性のある運用ができるように決めておきましょう。

⑥競業の禁止について
社員が増えると、転職が当たり前だと思っている人、競争相手の企業に移ることについて倫理的に許されないという考えはもっていない人が現れると想定しておくべきです。
また、在職中に、自社の商品やサービスを勝手に転売したり提供したりして小遣い稼ぎをする人も出てきます。
そこで在職中はもとより「退職後○年間、同一業種、同一職種、同一地域において、競業行為を行ったり、競業他社に就労してはならない」と定めておきましょう。

⑦損害賠償について
雇用契約書には労働基準法により「損害賠償、違約金規定」を書き示すことはできません。
ですが、これは一律に損害賠償額を決めてしまうのは禁止と定められているだけで、実際に会社が被害を受けた際に、それを請求することは可能です。
たとえば従業員が、不注意で火事を起こしてしまい商品の在庫が100万円分、すべて灰になったとします。
会社の管理体制の落ち度も問われますから全額を請求するのは難しいですが、それでも損害賠償請求を起こすことはできます。
このようなケースで従業員が損害賠償を行う際、会社は従業員の同意なしに給料から賠償額を天引きすることは許されませんので注意してください。
また、損害賠償を行ったからといって、その従業員を無罪放免にする必要はありません。
「損害賠償の発生によって懲戒処分を免れることはできない」と定めておきましょう。

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