こんな勘違いをなくそう! なぜ「黒字」なのに銀行は貸してくれないのか?

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なぜ「黒字」なのに銀行は貸してくれないのか?銀行はふつう、赤字の会社に融資をしません。では、黒字なら必ず融資してもらえるのか?
じつは、必ずしもそうではありません。

「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあるでしょう。決算書は黒字であるにもかかわらず資金繰りが苦しくなり、経営が立ち行かなくなって倒産してしまうことです。
これはめずらしいケースではありません。
なぜなら「黒字の企業」と「資金を効率よく使って事業を成長させている企業」は、イコールではないからです。

会計上の利益はあてにならない

黒字なのに資金繰りが苦しくなってしまう原因のひとつに、会社に現金が入金・出金されるタイミングと、会計項目に計上するタイミングが異なるということがあります。
実際に「会社に現金が入る日」は、会計上の「収益の事実が発生した日」よりもあとになることがほとんど。
たとえば、A社の1000万円分の商品をB社が購入するという契約を結んだとします。会計帳簿には契約が成立した日に1000万円が計上されますが、その時点では、A社の現金は増えていません。B社から1000万円を受け取ることができるのは、成約日よりもあとです。
B社から売掛金を回収するよりも先に、商品製造にかかった買掛金の支払いや、銀行借入金の返済、税金の支払い、従業員の給与支払いなどが重なれば、最悪の場合、資金が底をついて「資金ショート」を起こして、会社が倒産してしまう可能性もあります。
このため、会計上は利益が出ていても、会社が同額の資金を持っているとは限らない。黒字でも銀行は貸してくれないという認識が大事です。

流動比率とキャッシュフローをチェックされる

融資審査では、その会社が資金ショートを起こす可能性があるかどうかを判断する基準として、「流動比率」と「キャッシュフロー」に着目しています。
流動比率とは、企業の短期的な支払能力を判断する指標であり、次のように算出します。
流動比率(%)=流動資産(1年以内に現金化される資産)÷流動負債(1年以内に支払期限が到来する負債)
流動比率が100%以上であれば、短期的な支払能力が支払義務を上回っている状態であるため、債務履行力が十分にあると推測されます。
100%以下であれば、流動負債が流動資産を上回っている状態で、資金がショートする可能性があり、債務履行力に問題ありとみなされます。

もちろん流動比率は貸借対照表の数字をもとにしている以上、先に述べたように会社の資産の実態を正確に表しているわけではありません。しかし、安全性を簡易的に判断する指標としては実用性が高いといえます。

さて、流動比率が高いということは、会社にある程度の現金(キャッシュ)が残る状態になっているということです。
次に銀行が見るのは、そのキャッシュを「何に使っているか」です。
いつ何が起きても事業を継続できるよう、会社に資金を残しておくことは大事です。ただし、キャッシュをただ貯めているだけでは「資金を有効活用している」
とはいえません。
生活スタイルやニーズの変化が加速化している現代では、つねに事業を発展させるための「次の一手」を考え、適切なタイミングで、効果的な投資をしなければなりません。
それができているかどうか、現実に効果が出ているかどうか、銀行側はキャッシュフローの観察や、面接での質疑などから見極めているのです。

運転資金が増える「増運の会社」になる

会社には、2つの種類があります。

  • 仕事を受けるたびに運転資金が不足していく会社
  • 仕事を受けるたびに運転資金が増えていく会社

前者を「減運の会社」、後者を「増運の会社」と呼ぶことにします。
言うまでもなく、減運の会社は資金ショートのリスクが高い会社です。経費が先に出て、支払いが遅い業界にみられます。
たとえば、建築や工事関係の会社など、手形を受け取ることが多い業種。
または、ホームページ制作会社のように、完成と引き換えに報酬をもらうことが通例となっている業種です。

前述した「会社のお金の流れ」を思い出してください。
入金には「集める」と「増える」の2種類があります。
出金にも「減らす」と「変わる」の2種類があり、最後に現金や預金という形でお金は会社に「戻る」という流れでした。
では、ここで質問です。どの段階に問題があると資金ショートを起こす、つまり「減運の会社」になると思いますか?

「原材料費や人件費などを支払う『減らす』の段階だろう。費用が大きければ、たとえ売上が増えても、会社に残る利益が減ってしまう」

たしかに、それも一理あります。人件費を削減し、下請け業者や卸売業者に値引き交渉をして、より安価な材料を調達できれば、費用を圧縮できるでしょう。
しかし、資金ショートが起こる最大の原因は、「減らす」ではありません。
原因は「集める」にあります。ここに問題があるのです。連日ニュースに取り上げられた、学校法人森友学園の事件を思い出してみましょう。

問題の小学校の建設工事は、大阪の建設会社である藤原工業が15億円ほどで契約し、請け負っていました。しかし工事自体はほぼ完了していたにもかかわらず、問題が発覚し、工事代金の一部が未払いの状態です(※平成29年11月現在)。

藤原工業は黒字倒産したわけではありませんが、数億円もの代金を回収できなければ、買掛金や給与の支払いが苦しくなり、資金繰が悪化します。
売上自体が回収できなければ、費用をいくら安くしても、経営は悪化してしまうのです。

では「減運の会社」にならないためには、どうしたらいいのでしょうか。
あるリフォーム会社は、工事代金を「工事完了時に全額受け取る」という契約で仕事をしていました。当然、工事が完了するまではすべての費用が自社持ち。
工事中はつねに資金繰りが苦しくなっていました。

このままではいけないと感じた社長は、ある決断をしました。契約時に、代金の3分の1を「前受金」として請求するようにしたのです。
取引先からは不満の声が出ましたが「より良い仕事をするためです」と説得を繰り返し、前受金のスタイルを定着させました。そのお金で新しい道具や機械を導入することで作業環境および顧客満足度が向上。効率化によってスケジュールに余裕が出た分、より多くの仕事が受けられるようになり、資金繰りが改善されて「増運の会社」へと変わっていったのです。

「大口契約の取引先が急に倒産してしまい、売掛金が全額回収できなくなった」このような最悪な事態を避けるためにも、取引相手の支払能力をしっかりと見極め、前受金を請求するなどの工夫や努力が必要なのです。

会社の実態がわからないのはNG

「銀行が嫌う5つの勘定項目」といわれているものがあります。
貸借対照表の「貸付金」「仮払金」「売掛金」「棚卸資産」「開発費」です。
この項目の数字が大きいと、第三者にとって企業の実態がわかりにくいものになる、と覚えておいてください。

【貸付金】……銀行にもっとも嫌われている項目

使途不明な支出を処理したり、費用として処理すべき支出を資産として計上することで利益を大きく見せるなど、粉飾決算に使われやすい項目です。
また「設備投資(または運転資金)のためにお金を借りたい」と言われても、貸付金の数字が計上されていれば「貸したお金を本当に事業に使うのか?」と疑うのは当然です。
貸付金を計上したときは、必ず貸付先と内容、いくら返ってきたかなど、説明できる内訳表をつくっておきましょう

【仮払金】……疑われやすい項目

精算の必要がないものを仮払金として計上したり、意図的に精算せずに流動資産のままにしておくなど、決算書を黒字にするために不適切な計上をしているケースが多い項目です。「貸付金と仮払金が多い=社外に流出するお金が多い」と映り、不透明なお金が資産として計上されていれば、
「数字上は黒字でも、本当は赤字ではないのか?」
「融資をしても、事業以外の部分で使用されるのではないか?」
「正しく経理処理されているのか?」
などなど、疑念と不信感を生み出してしまう可能性があります。

【売掛金】【棚卸資産】……場合によっては問題になる項目

売上高が増えているときに、売掛金や棚卸資産が増加するのは問題ありません。
しかし、売上高の増加よりも売掛金や棚卸資産の増加が大きければ、「資金繰りが悪化している」「不良在庫が発生している」とみなされたり、「利益確保のために水増ししているのでは?」という疑念を抱かせてしまいます。

【開発費】……利益の水増しを疑われる項目

開発費は、計上できる範囲が曖昧です。費用として計上すべきものを開発費に計上し、利益が増えたように見せかける方法があるため、開発費が多いと不要な疑いをかけられるかもしれません。


「貸付金」「仮払金」「開発費」はなるべくゼロにし、売上高の増加が少ないときは「売掛金」と「棚卸資産」の数字にも注意しましょう。

これらの数字がすでに大きく、どうしたら減らせるのかわからない場合は、税理士などの専門家に相談をしてください。
また、決算書は「企業の実態が見えやすい」ものであることが重要です。
当然、経営上の問題も見えるようになってしまいます。

「○○については、どのような対策を取っていますか?」

などと質問をされたとき、経営者がすでにその問題を把握し、対策を実行している(または実行の計画がある)ことをしっかり伝えれば、評価を下げることはないでしょう。

会社が生き残るためには、黒字の状態を維持する必要があります。
黒字を維持するためには、経営者が会計の数字をある程度理解できるようになり、会社のお金がどのように流れているのかを常に意識する必要があります。
わからないことがあれば会計事務所などを訪ねて、専門家に質問してみましょう。

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