税務署は介護事業者の数字のここを見ている

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税務署は介護事業者の数字のここを見ている

「うちは、自分とヘルパーさん数人の小さな事業所。年商も1,000万円未満だから税理士なんていらないよ」という介護事業者の社長さん、それはちょっと早計かもしれません。
実は近年、税務調査で指摘される項目として、ヘルパーさんの源泉所得税の未納付の問題や介護保険の未収金の問題があります。
この背景にあるのは、普段の実務作業に忙殺され、なかなか経理作業まで手が届かないという実態があるからでしょう。
売上台帳の作成を行っていない事業所も多く、経営もどんぶり勘定になってしまっていることが多いのではないでしょうか。
最近では、売上や経費などの経営情報をうまく活用できないために、ヘルパーさんの残業代や光熱費が膨大になってしまい、なかなか利益を出すことができない事業所も多くなっているといいます。
このため、多くの事業所が競合他社との競争で苦しんでいるそうです。毎日の売上管理がこれらの問題の鍵を握っているといえそうです。
今回は介護事業者の会計について、ご紹介していきます。

多くの売上が非課税になる業界

介護業界の会計は他の業界と異なった特徴があります。
第1に、売上のほどんどが非課税であることです。
介護関連の売上であれば、消費税も非課税のため、税金を支払う売上はほとんどないと考えている経営者も多いかもしれません。
しかし、その一方で非課税でないものもたくさんあるのです。
たとえば、介護保険の対象外となる上乗せ給付、介護保険以外のサービス、福祉用具の販売などから得られた利益に関しては課税対象となるのです。
消費税の課税対象となる主なものは、次の通りです。

  1. 介護サービスの延長上で利用者が別途、過度に贅沢な居室や食事を要求したときの費用
  2. 通常の事業地域以外からヘルパーを呼び寄せ、訪問介護、入浴介護を行った場合の交通費、送迎費用、特別な浴槽水などの費用
  3. 利用者の自費にて、訪問介護で身体介護が行われた場合の費用
  4. 身障物品に該当しない福祉用品の販売分の費用
  5. 介護タクシーのメーター料

 
こうした項目を知らずに非課税で処理していると、思わぬところで税務調査が入ったときに指摘され、会計処理に対して税務署から否認を受けて、過去にさかのぼって修正申告を行わななければ、ならなくなった事業所も少なくありません。

ちなみに、不動産業を営んでいる法人が介護事業をはじめとした複数の事業を展開している場合、法人ごとに課税事業者かどうかの判断がくだされます。
そのときに他の事業で年商1,000万円を超えている場合は、介護事業に関しても、消費税の納税義務が生じます。

このため、将来、事業を拡大していきたいのであれば、課税される売上に対して税理士とともに売上台帳の作成や入金管理、管理会計を行っていく必要があります。
売上台帳をつくれば、国民健康保険連合会への介護保険の請求の有無もひと目で把握することができますし、利用者からの振込など入金管理面も容易になり、経費も節減することもできます。
これによって経営方針や売上目標の設定も簡単にできるようになります。
会社の今後の成長のためにも、ぜひ売上台帳の導入を検討してみてください。
 

税務調査で指摘される2つの問題

冒頭に紹介したように、税務調査で調査官から指摘を受ける項目として多いのが、「ヘルパーさんの源泉所得税の未納付問題」と「介護保険の未収金計上の問題」が最近は特に多くなっているようです。
多くの社長さんが勘違いしているのが、「ヘルパーさんは年収103万円未満だから、源泉所得税を支払わなくてよい」というものです。
基礎控除と給与所得控除の合計103万円の控除を年末調整で受けるためには、「給与所得者の扶養控除等申請書」を提出する必要があります。
仮にこの申請書を提出しなければ、ヘルパーさんの源泉所得税を支払う必要が出てくるのです。

実はヘルパーさんを一人でも雇い入れた場合は、どんな事業所も給与支払事務所に該当します。
給与支払事務所になれば、ヘルパーさんに支払う給与から源泉所得税を天引きして本人に代わって支払う義務を負うことになるのです。
そして、通常、徴収した源泉所得税は、給与を支払った翌月10日までに納めることが義務付けられています。
もし、支払っていない場合は会社が代わりに支払う必要があるのです。
では、すでに事業所を辞めてしまったヘルパーさんの源泉所得税は誰が払うのでしょうか?
もちろん、最終的には本人が支払わなければいけませんが、辞めた人の源泉所得税を回収するのは、現実的に難しいようです。
ですので、控除の申請書を提出してもらってから働いてもらうようにしましょう。

「介護保険の未収金計上の問題」は、多くの社長さんが1ヵ月分だけ計上しています。
ところが、提供した介護保険サービスは国民健康保険連合会に請求後、2ヵ月後の入金となります。
このため、会計処理上は未収金の計上金額は2カ月分となるのです。
たとえば、5月分として提供された介護サービスは、国保連合会へ6月10日請求することになると、7月末までに入金されることになります。
この場合、5月末の介護保険の未収金は6月末に入金される4月分の介護保険請求額と7月末に入金される5月分の介護保険請求額を計上する必要があるのです。
仮に計上漏れが指摘されれば、法人税が増額されたり、加算税や延滞税などがペナルティとして課されることになるので注意が必要です。

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