「うちはまだ必要ない」は本当か その2

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「うちははまだ必要ない」は本当か その2以前は地域でいちばん大きな介護系サービス会社に勤めていて、売上は数億円。直属の部下に指示しながら部の業績を伸ばした。お客様にも慕われ、応援してくれる人 もたくさんでてきたので独立した──。

起業した人は、多かれ少なかれ、そのようなサクセスストーリーをもっていることでしょう。

ですが、起業直後に経営者が最も悩むこと。それは人材不足です。
とくに、参謀役とよばれる人達がいないといって、皆悩むのです。

 会社の悩み、誰に相談できますか?

頼れるのは社内より社外の人

独立時から従業員を雇える人はまれで、よくて2~3人。多くの人は自分一人だけで会社をはじめる方がほとんどでしょう。

会社に勤めていたときは何か悩み事があると、同僚や上司に、信頼できる部下に相談できました。ですが、独立後は違います。社長と従業員という立場の違いから相談できなくなるのです。

たとえば、いま資金繰りが苦しいとします。
「あと100万円あれば、今月末の給料を全員に支払うことができるのだけど……」
と悩んでいても、それをまさか当の本人達に打ち明けるわけにもいきません。

もし話してしまえば、
「今月の給料が危ないらしいぞ。会社は大丈夫か」
と会社中にすぐに知れ渡り、優秀な人なら、辞めてしまうこともあるでしょう。

そこで、頼れるのが外部の人間です。

銀行が主催する経営者のクラブ、商工会議所などに顔をだせば、経営者の友人をつくることができるでしょう。セミナーや、懇親会などに参加すれば、お互いの悩みは 共通ですし、先輩社長などに解決策を教えてもらうことができるはずです。

起業直後だからこそ相談できる

しかし、友人とはいえ、具体的な会社の数字を出して、アドバイスを求めることまでは気が引けるのではないでしょうか。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査資料(2012年度)によると、会社の創生期に「支援が必要になった社外の人材・組織の1位が税理士・公認会計士となっています。(図参照)

従業員に相談できないこと、経営者仲間に相談できないことでも、税理士なら大丈夫です。なぜなら、経営者と税理士の間に隠すことは何もないからです。

仕事上、税理士には会社の数字を全部教えなくてはいけませんから、お互いに「腹をわった」関係が築けるのです。恥ずかしいこともありません。

会社の規模が大きくなり、なんでも相談できる、優秀な参謀が雇えれば問題はありません。しかし、会社の規模が小さいときこそ、会社経営の悩みを解消してくれる外 部の人材として、税理士がもっとも頼りになるのです。

 
図 創業時にいちばん頼りになる人材・組織は?

 

社長がすべての業務をこなす会社は成長しない

税理士がいない会社ほど成長は遅い

歯が痛くなれば、歯医者に行かねばなりません。

腹痛や頭痛などは、いつの間にか治っていたということもありえますが、歯痛は違います。虫歯や歯周病は確実に悪化します。詰め物をして軽度の処置で終われるはず だったのに、抜歯しなければならなくなるほどに悪化します。

同じことが法人税の申告についても言えます。

たとえば個人事業から株式会社へ法人化させた人が、「個人事業のときから青色申告を勉強し、帳簿も自分でつけ、節税につとめていた。
会社になっても基本は同じだから、税理士はいらないと法人化後も顧問税理士をつけずにいました。

とはいいながら、会社が軌道にのりはじめ、個人事業とは比べものにならないほど、事務や経理作業は繁雑をきわめつつありました。さまざまな経理管理上のことに不安 を覚えながらも
「最近は便利な会計ソフトも市販されている。新聞広告にも『税金の申告はコレ1本でOK』と書いてある。それで決算は乗り切れるだろう」
とそのソフトを購入、経理担当社員にそのソフトで記帳を指示し、作業をさせていました。しかし、担当社員からは
「この請求書はどの勘定科目にいれたらいいのですか」
「クリックしても指定の画面に切り替わりません」

と質問が絶えず、いちいち答えていることは困難なことに気付き、数カ月後には挫折。ついに友人の紹介で税理士をつけることにしたのです。その税理士からは、
「もう少し早くに、ご相談いただければ、会社の経営ももっとスムーズになっていたと思いますよ」
とあきられるはめになってしまったのです。

 会計は税理士に任せ、社長は社長業に集中せよ

私たちは仕事で
「会社の決算書は自分たちだけで作成できますか」
と尋ねられることが多いです。ですが、これは答えるのに難しい質問です。なぜなら、税の申告にかぎらず「人がやってできないことは、そうそうないからです

社長となるような人は、事務、経理、販売、経営戦略、クレーム対応など、会社のあらゆる業務をこなせる人が多いと思います。現に個人事業主の多くは、そのような オールマイティーな能力を生かして、自分一人でなんでも済ませています。

ですが、法人化したときには、発想の転換が必要です。
「自分でなければできないこと」だけを社長が担当し、「自分でなくてもできること」は社員に任せていかなければ、社員は育ちませんし、会社も大きくなりません。

人に仕事を任せると、社長には「時間」ができます。

その「時間」を、創造的な作業に割り当てるべきですし、それが社長業だともいえます。

会計や税務のことは、税理士に任せておけば、社長の拘束時間がそれだけ少なくなります。その分、経営戦略や研究開発に労力を注ぎ込むことができるはずです。

「税理士に怒られそう」は思い込み

税理士は社長の味方です。

間違った先入観により、税理士をイヤがる経営者がいます。
「売上管理、経費管理、伝票の書き方、用紙は統一されておらず、めちゃくちゃだ。こんな状態で、税理士に来てもらうと怒られそうだ」
という思い込みです。

このような経営者には、一つの誤解があります。
それは、税理士と税務署は同じではない、ということです。
たしかに、経理がぐちゃぐちゃになっていると、税務署の人は厳しく注意することがあります。しっかりと帳面がついていないと、自分達が書類をチェックする際に時間がかかり、税額を確定させ、徴収するのに倍以上の手間がかかってしまうからです。

一方、税理士は社長の味方です。
帳面に不備があると丁寧に指導してくれますし、節税できる方法があると、気軽に教えてくれるはずです。
正しい税の申告のお手伝いをすれば、その分、経営者との信頼関係も強まります。

税理士にとって経営者はあくまでも「お客様」なのです。
一昔前には経営者に対して高圧的な態度に出る税理士もいましたが、現在ではそのような人はほとんどいなくなりました。
なぜなら税理士業界は過当競争の真っ最中であり、「上から目線」で顧客と接する税理士事務所は依頼が減り、どんどんと廃業に追い込まれているからです。

資金繰りで親身になってくれる場合も

税理士は偉そうだ、怒られる──。
このように考えている人は、一旦その考え方を捨ててください。

そして、友人知人などに紹介を頼んだり、書籍などから何人か税理士をピックアップして、実際に会ってみたりしてください。自分の考え方が間違っていたことに気がつきます。

税理士業界は、いま大きな変革期にあります。毎月数十件の顧問先を獲得しどんどん伸びているところ、新たな顧問先を増やすことができず売上を落としているところ、明確に二極化しつつあるのです。
大きな税理士事務所でも、さらに大きなところに買収される可能性があり、業界の再編が急ピッチで進んでいます。

この状況は経営者側にとっては喜ばしいことなのです。
業界内の競争により、一昔前では「かなり優秀な」事務所でしか行っていなかったサービスが、一般的な事務所でも当たり前に行われるようになってきているからです。

たとえば、会社の資金繰りが悪化したとします。
昔の税理士なら「銀行からお金を借りてください」とアドバイスがあるだけです。
ですが、今の税理士は「私の懇意にしている銀行がありますから、紹介しましょうか。公的な助成金もありますよ」と言ってくれるでしょう。

税理士は怖い、怒られる──そんな思い込みは捨て、いい税理士を雇い、さまざまな面で活用し、社長の味方になってもらうことを考えたほうがいいでしょう。

 

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