増運の会社と減運の会社

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増運の会社と減運の会社会社経営において重要な「運転資金」という観点から見た場合、会社には「増運の会社」と「減運の会社」があります。

・運転資金の増えていく会社=増運の会社
・運転資金の減っていく会社=減運の会社
とここでは言うことにします。

前受けで支払ってもらえるのが理想

減運の会社は、仕事を受けたら受けただけ、商品を販売したら販売しただけ、お金がなくなっていく会社です。
業種として陥りやすいのは、経費だけが先に出ていく会社です。

たとえば、アパレルや織物系の会社は、手形をもらうことが多い業種です。

60日後、90日後という期限で手形をもらえば、大変です。
その間に、原材料費や職人の人件費がどんどん出ていきます。
作業が完了しても、実際に納品先からの支払が行われるまでに、他の支払が重なってしまうと、すぐに倒産してしまいます。

実は、有名な京都の西陣織を始めとした全国の織物業が衰退したのはこの理由です。

最近では、若い人たちがよく起業する業種である、ホームページ制作業や、ソフトウエア制作業などIT系の会社も注意が必要です。

同じような職種の会社と相見積もりをとられるため、他社よりも無理な支払条件を呑んでしまい受注しようとするからです
逆に増運の会社は、どのような特長があるのでしょうか。

それは決算書に「前受金」という項目がある会社です。

これは、すでにお客様からお金をもらったけれども、現時点では売上計上しなくていい金額のことです。
前受金がないと、すでに減運のスパイラルに陥っている会社だと自覚しなければいけません。

ある木工会社の社長がいます。
その木工会社は、下請けで室内の一部分の内装を手掛ける会社で、工事代金は工事完了時に全額でもらうというスタイル──紛れもなく減運の会社でした。
その会社の社長が、アレン・B・ボストロムの『イン・ザ・ブラック』を読み、「何とかせねば」との思いにかられたようで、お客様に対して勇気を持って前受金をもらえるようにお願いされたのです。

最初は嫌な顔をする取引先もありましたが
「いい工事を行うためには、代金の1/3~1/2は前受金としていただくことになっています」

と自信を持ってお客様にお願いするようになってから、それまでは仕事をすればするほど会社のなかからキャッシュがなくなっていたのが、お金がどんどん舞い込んでくるようになったとのことです。

この例を、ある経営者の集まりの際にお話しすると
「本当ですか」
「信じられない」
と皆一様に驚かれました。

ただ、ほとんどの人が聞き流すなかで、あるホームページ制作業の社長さんが「前受金」を実践されました。
どんどん業績が上向いていったその会社では、今では受注するすべてのお客様から「100%の前受金」をいただいているそうです。

これは本当の話です。

前受金の落とし穴に注意

他にも、ビジネス系雑誌、業界新聞などの定期発行物、スポーツクラブやエステティックサロン、カルチャースクールなどの年会費は典型的な前受金ビジネスです。

これらの業種に共通しているのは、顧客が「先に現金を払ってもいいから手に入れたい」と思うほどの優れた商品やサービスを提供していることです。

ちなみに、最近よくテレビCMをしているライザップは、初回に30万円は必要です。
ただ、前受金ビジネスを行う際に注意していただきたいことがひとつだけあります。

前受金は貸借対照表上では負債として扱われます。
手元のキャッシュを増やすためには有効な方法ですが、前受金の実体は自分の資金ではないことを肝に銘じておきましょう。

2007年に破たんした大手英会話学校NOVAは、何年も先の分の受講料を一括で受け取る、前受金ビジネスの典型でした。
しかし、その前受金を教室増加のための先行投資に注ぎ込んだことが経営を圧迫したのです。
前受金ビジネスの有利な点だけに着目し、本質を理解していなかったために起こった悲劇ともいえます。

経営というのは、ほんの少しのことでダメになったり、儲かったりします。
経営者というのは、常にその分岐点に立っており、重要な決断を迫られている存在だということを忘れないでください。

前受金の本質を理解すれば、減運の会社が、増運の会社に変化することが可能です。

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