ファクタリングはサービスを提供する会社の事業分野ごとに分類されています。銀行などの金融機関は「銀行系ファクタリング」、銀行以外の金融業者は「ノンバンク系ファクタリング」、ファクタリングの専門事業者は「独立系ファクタリング」と呼ばれています。
銀行系ファクタリングは、銀行などの金融機関が提供しているサービスであり、他の系統のファクタリング会社とは異なる特徴があります。
今回の記事では、銀行系ファクタリングについて解説します。
独立系ファクタリングとの違いについても解説しているため、銀行系と独立系の違いを比較し、自社に合うファクタリング会社を選ぶようにしましょう。
銀行系ファクタリングとは銀行が提供するファクタリングサービスのこと
銀行系ファクタリングは、メガバンクの関連会社や地域銀行がサービスを取り扱っているため、以下のような特徴があります。
<銀行系ファクタリングの特徴>
- 安全性の高い取引が行える
- 大きな金額の債権を売却できる
- 数種類のファクタリングサービスを提供している
他の系統のファクタリング会社と比較をするためにも、銀行系ファクタリングの特徴を押さえておきましょう。
安全性の高い取引が行える
現在、ファクタリング事業の運営に対して特別な法令による規制はありません。事業を開業する際にも法的な免許や届出を行う必要がないことから、ファクタリングと偽って貸付や融資にあたる違法契約を行う悪徳業者も存在します。
一方で銀行は、金融機関として事業運営を行う上で金融庁から厳しい監督や規制を受けています。銀行法や金融商品取引法など多くの法令を遵守して金融商品を提供しているため、ファクタリングサービスの提供においても安全性の高い取引が行えるといえます。
大きな金額の債権を売却できる
ファクタリング会社の中には、利用時の上限金額を設けている会社があります。利用限度額は会社の資金力から設定されることが多いため、大手を除いた中小規模のファクタリング会社は数千万円や1億円としているところが多い傾向です。
銀行は、個人や企業からの預貯金や融資の提供、国債や社債などの有価証券の保有などによって豊富な資金力があります。そのため、大きな金額の債権を買い取っても利用者へ買取金額を支払うことができるため、数億円以上の債権買取が可能です。
ただし、コストや収益性などの観点から数十万円から数百万円などの少額債権の買取りには消極的である特徴があります。少額債権を売却する場合には、銀行系ファクタリングではなく、少額でも買取可としているファクタリング会社を検討するとよいでしょう。
数種類のファクタリングサービスを提供している
銀行系ファクタリングは、幅広く金融業務を行ってきたノウハウやネットワークがあることから、数種類のファクタリングサービスを提供しています。売掛債権の資金化を目的とした「買取ファクタリング」以外に、「保証ファクタリング」や「国際ファクタリング」、「一括ファクタリング」などの取扱いがあります。
銀行系ファクタリングはさまざまなサービスの提供があるため、利用者は自身のニーズに応じたファクタリングを行うことが可能です。資金化以外の目的で売掛債権を譲渡したい場合に利用を検討するとよいでしょう。
保証ファクタリング
売掛債権の支払いを銀行が保証するファクタリング。
万が一に売掛先企業の倒産により売掛金が回収できなくなった場合などに、保証限度額内の保証金が支払われる。
国際ファクタリング
輸出債権の回収管理と支払いを銀行が保証するファクタリング。
海外のファクタリング会社と提携し、輸入先企業からの代金回収や管理を行う。万が一に倒産や不払いなどのリスクが発生した場合には、原則100%の支払いが保証される。
一括ファクタリング
手形取引における買掛債務の決済手続きを銀行が代行するファクタリング。
銀行が買掛債務の決済を管理することで、売掛金を支払う企業は手形の振出を廃止でき、売掛金を受け取る企業は手形を管理する負担を軽減できる。また、必要に応じて期日前の資金化も可能。
ノンバンク系や独立系ファクタリングとの違い
銀行系ファクタリングで売掛債権を資金化する場合、ノンバンク系や独立系ファクタリング会社と比べ、以下のような違いがあります。
<銀行系ファクタリングとノンバンク系や独立系ファクタリングの比較>
銀行系ファクタリング | ノンバンク系ファクタリング | 独立系ファクタリング | |
---|---|---|---|
契約形態 | 原則3社間ファクタリング | 2社間ファクタリングあるいは3社間ファクタリング | 2社間ファクタリングあるいは3社間ファクタリング |
審査対象 | 利用する企業と売掛先企業の双方 | おもに売掛先企業ではあるが、利用する企業も注視される | おもに売掛先企業 |
利用時の手数料相場 | 1~10% | 2~20% | 2~30% |
資金調達にかかる期間 | 1~2週間ほど | 1週間ほど | 数日~1週間 |
会社の信用情報への影響 | ある | 影響は少ない | 影響は少ない |
銀行系ファクタリングは3社間ファクタリングによる契約である
銀行系ファクタリングの契約形態は原則として3社間ファクタリングです。3社間ファクタリングは、売掛先企業から売掛債権の譲渡に対する同意を得る必要があります。同意への返答を待つ期間等が発生します。そのため、資金調達に数日から1週間ほどの期間を要し、早期資金化は難しい傾向にあります。
一方で、ノンバンク系や独立系ファクタリングでは2社間ファクタリングを選択することができます。2社間ファクタリングは売掛先企業への債権譲渡通知を行わないため、返答を待つ期間が発生しません。売掛先企業の関与がないため、審査や手続きがスムーズに進めば即日あるいは数日で資金調達を行える場合があります。
3社間ファクタリングと2社間ファクタリングの大きな違いは、売掛先企業の関与であり、ファクタリングの利用を取引先となる売掛先企業が把握することになるという点です。
したがって、利用を知られても理解が得られそうな売掛先企業がある場合や資金化を急いでいない場合は、銀行系ファクタリングも候補として挙げられるでしょう。利用を知られたくない場合や早期資金化を希望する場合には、2社間契約が可能になるノンバンク系や独立系ファクタリングの利用を検討しましょう。
ただし、2社間ファクタリングであっても債権譲渡登記が求められるケースでは、売掛先企業がファクタリング利用を知る可能性がでるため、どうしても利用を知られたくないという場合には、債権譲渡登記の有無を契約時に確認をしておきましょう。
銀行系ファクタリングは利用者も審査対象になる
銀行系ファクタリングは、申込を行った利用者も審査対象に含まれます。銀行が審査基準に定める一定レベルの信用力や財務状況を、利用する企業も満たしていなければ利用を断られる場合があります。
一方で、ノンバンク系や独立系ファクタリングは、おもに売掛先企業の信用力や財務状況を審査します。ノンバンク系ファクタリングに限り、利用者の経営状況も注視されることがありますが、利用する企業が赤字企業であっても信頼性の高い売掛先企業の売掛債権であれば利用できる可能性があります。
したがって、事業継続に問題がなく資金繰りが安定している場合は、銀行系ファクタリングも候補として挙げられるでしょう。経営状況に不安がある場合には、ノンバンク系や独立系ファクタリング会社の利用を検討しましょう。
銀行系ファクタリングは手数料相場が低い傾向にある
銀行系ファクタリングの手数料相場は1~10%で、ノンバンク系や独立系ファクタリングの相場に比べると低い傾向にあります。
銀行系ファクタリングは、個人からの預貯金や銀行間取引などにより低コストで資金調達が行うことができます。余計なコストを掛けることなく豊富な資金を集めることができているため、利用時の手数料を低めに設定することができています。
一方で、ノンバンク系ファクタリングの手数料相場は2~20%で、銀行よりは高めの相場となります。しかし、大手クレジット会社やリース会社が提供しており資金力があることや、貸金業法の規制があるため高額な手数料になる可能性は低い傾向にあります。
対して、独立系ファクタリングの手数料相場は2~30%です。顧客のニーズに合わせて柔軟な対応を行う代わりに、手数料を高めに設定しているということが相場を引き上げる理由として挙げられます。
したがって、売却後に受け取る買取り金額をなるべく多くしたい場合は銀行系ファクタリングやノンバンク系ファクタリングの利用がよいでしょう。ある程度の手数料負担はあるものの、早急な資金化など柔軟な対応を優先したい場合には、独立系ファクタリングを検討してみてください。
銀行系ファクタリングは会社の信用情報に影響が出る場合がある
ファクタリングは借入やローンではなく債権売買(譲渡)であるため、利用したことが会社の信用情報に記載されることはありません。ただし、銀行系ファクタリングは、親会社が銀行であるため利用した情報が共有されることにより、会社の信用情報に影響が出る場合があります。
影響が出るケースは長期にわたり継続的に利用している場合です。資金繰りが厳しく経営状態が悪い企業であるという印象がついてしまう可能性があり、信用度の低下により親会社である銀行からの融資の際に不利になる場合があります。
一方でノンバンク系や独立系ファクタリング会社を利用しても信用情報に変化を与えないため、影響は少ないといえるでしょう。ただし、頻繫に利用していることが売掛先企業に知られた場合には、経営に対する不信感から取引が減らされるなどの影響を与える可能性もあるため注意が必要です。
したがって、将来的に銀行からの融資などを検討しており、単発利用であっても影響を不安視する場合には、ノンバンク系や独立系ファクタリングの利用を検討してみてください。
ファクタリングを提供している銀行と取り扱い内容について
ファクタリングサービスを提供しているのは、メガバンクや地方銀行の関連グループ数社です。
<ファクタリングを提供している銀行 一例>
【メガバンク】
ファクタリング会社名/銀行名 | 取扱いサービス |
---|---|
みずほファクター/みずほ銀行 |
|
三菱UFJファクター/三菱UFJ銀行 |
|
SMBCファイナンス/三井住友銀行 |
|
りそな決済サービス/りそな銀行 |
|
- 地方銀行
ファクタリング会社名/銀行名 | 取扱いサービス |
---|---|
浜銀ファイナンス/横浜銀行 | 買取ファクタリング |
北洋銀行 | 一括ファクタリング |
十六銀行 |
|
スルガ銀行 |
|
静岡銀行 |
|
メガバンクは、「保証ファクタリング」や「国際ファクタリング」などのサービスが充実しているため、売掛金の支払保証や輸出債権の管理を依頼できます。ただし、売掛先を一定数以上指定するなどの条件が設けられている場合があります。
地方銀行は、「一括ファクタリング」の取り扱いが多く見られるため、手形取引における決済手続きを依頼することができます。一部の地方銀行では、業務提携先のサービスを利用することで買取ファクタリングを契約することが可能です。
なお、同じ種類のサービスであっても銀行によって利用条件が異なることもあるため、利用する際はサービスを提供する銀行のホームページなどを事前に確認し、比較検討するようにしましょう。
まとめ
銀行系ファクタリングとは、銀行が提供するファクタリングサービスのことを指します。メガバンクや地域銀行を親会社にもつファクタリング会社がサービスを提供しているため、安全性の高い取引が行える、大きな金額の債権を売却できる、数種類のファクタリングサービスを提供しているという特徴があります。
また、銀行系ファクタリング会社の提供する「買取ファクタリング」は、ノンバンク系や独立系ファクタリング会社のサービスといくつか異なる点があります。契約形態は原則3社間ファクタリングであることや、審査は利用者も対象となる点に留意して利用を検討するようにしましょう。
なお、ファクタリングサービスの提供は、メガバンクや地方銀行の関連グループ数社が行っています。取り扱うファクタリングの種類や利用時の条件などは銀行によって異なるため、利用を検討する銀行のホームページなどを事前に確認して申込を行うようにしましょう。