売掛債権の売却を行うファクタリングは、売掛金の支払期日前に現金を入手できるため会社経営者が資金繰りを改善したいときの利用に向いています。法人の場合は、個人事業主に比べて調達できる金額が増えたり、利用時の信用評価で有利になったりする場合があり、ファクタリングを利用するのに向いています。
当記事では、法人がファクタリングを利用する利点を解説します。ファクタリング契約を結ぶ際の注意点も併せて解説しているため、ファクタリングの利用を検討している法人格を持つ会社経営者は参考にしてみてください。
法人がファクタリングを利用する利点は資金調達が行いやすいこと
法人がファクタリングを利用する利点として挙げられるのは、資金調達が行いやすいことです。個人事業主に比べて、法人はファクタリングを有利に利用できる場合があります。
【ファクタリングで法人が資金調達を行いやすい理由】- 個人事業主に比べて売掛債権の金額が増加しやすい
- 個人事業主に比べて信用評価を得やすい
これらはあくまで一例ですが、法人がファクタリングの利用に向いている理由として挙げられます。ファクタリングの利用を検討している法人経営者は、それぞれの理由を押さえておきましょう。
個人事業主に比べて資金調達できる金額が増える可能性がある
法人がファクタリングを利用する利点の1つは、個人事業主に比べて資金調達できる金額が増える可能性があることです。法人は個人事業主に比べて、扱っている売掛債権の金額が増える傾向があるからです。
法人は登記簿謄本を取り寄せることで「会社名」「本店住所」「事業目的」「役員の名前」などの法人登記に登録されている情報を誰でも参照できます。個人事業主の場合は、開業届を提出するのみで商業登記を行っていない場合もあり、個人事業主の実態を他社が確認しにくい傾向があります。
そのため、企業の中には法人とのみ取引を行うという経営方針を取っている企業もあり、個人事業主に比べて取引を行う企業数が増える傾向があります。複数の企業の売掛債権を合わせて売却することで、ファクタリング会社に買い取ってもらえる金額を増やせる場合があります。
なお、売掛金の額面がより高額な債権を売却することでファクタリング会社による買取金額も増額される傾向があります。ファクタリングでは売掛債権の額面に応じて買取金額が決定されるため、資金調達したい金額に近づくよう複数の売掛債権を合わせて売却してみましょう。
個人事業主に比べて信用評価を得やすい可能性がある
法人がファクタリングを利用する利点の1つは、個人事業主に比べて信用評価を得やすい可能性があることです。法人は個人事業主に比べて、財務諸表を公開している傾向にあるからです。
法人は、株主や債権者に対する事業の透明性を確保するために、決算書や税務申告書などの財務諸表を公開している傾向があります。財務諸表を公開されていると、ファクタリング会社から会社の経営状態の適切な評価を受けやすくなり、経営が安定している場合は信用評価を得やすくなる可能性があります。
一方、個人事業主の場合は、株主や債権者がいないことや競合他社へ情報を知られるおそれがあるため財務諸表の公開を控える傾向にあります。そのため、個人事業主の場合は財務の流れが不透明になりやすく、ファクタリング会社の信用評価も法人に比べて好評価を受けにくくなる可能性があります。
なお、ファクタリング会社による信用評価は売掛先企業の信用評価も影響します。ファクタリングの利用を検討している法人の経営者は、財務諸表の公開を行っている法人の売掛先企業の売掛債権を優先した売却も検討してみましょう。
法人がファクタリングを利用するときの注意点は債権によって資金調達額が変わること
法人がファクタリングを利用するときの注意点は、売却する債権によって資金調達額が変わることです。ファクタリングの利用を検討している法人は、売却額が上がる可能性がある売掛債権の特徴を押さえておきましょう。
【売却額が上がる可能性がある売掛債権】
- 信用力がある売掛債権を売却する
- 支払期日が短い売掛債権を売却する
これらはあくまで一例ですが、ファクタリング会社への売却額が上がる可能性がある売掛債権の特徴として挙げられます。ファクタリングの利用を検討している法人は、それぞれの特徴を確認しておきましょう。
信用力がある売掛債権を売却する
ファクタリング会社への売却額が上がる可能性がある売掛債権は、信用力がある売掛債権です。信用力がある売掛債権の場合、買取手数料を抑えやすくなる傾向があるからです。
売掛債権をファクタリング会社に売却する際は、買取手数料が発生します。売掛債権の売掛金額から、債権譲渡に関わる登記費用や買取手続きに関する料金などが買取手数料として差し引かれることになるため、買取手数料の金額が増加すると売掛債権の売却金額が減少してしまいます。
売掛債権の買取手数料は、売掛債権の信用力によって金額が変動します。売掛債権に信用力がある場合は、回収不能リスクが低いと判断されやすいため手数料も抑えられる傾向がありますが、信用力が劣ると判断されてしまうと回収不能リスクを補うために買取手数料が割高に設定される可能性があります。
信用力がある売掛債権を売却して手数料を抑えることで、ファクタリング会社による買取金額の増額も期待できます。そのため、ファクタリングの利用を検討している法人は、資金繰りの安定している売掛先企業の売掛債権を売却するようにしましょう。
支払期日が近い売掛債権を売却する
ファクタリング会社への売却額が上がる可能性がある売掛債権は、支払期日が近い売掛債権です。支払期日が近い売掛債権ほど、ファクタリング会社による買取率が上昇する可能性があるからです。
ファクタリングを利用するとき、売掛債権を売掛金額の何割の金額で買い取ってもらえるかはファクタリング会社によって異なります。ファクタリングの買取率の評価に影響を及ぼしやすい要因の1つとして、売掛債権の支払期日が挙げられます。
売掛債権の発生から支払期日までの期間が近く設定されている場合、売掛先企業の資金繰りが安定していて支払い能力があると想定されます。そのため、ファクタリング会社では支払期日が近い売掛債権ほど回収不能リスクが低いと判断され、買取率が上昇しやすい傾向にあります。
売掛債権の支払期日は売掛先企業との契約内容によって異なります。同じ売掛先企業の売掛債権であっても支払期日の期間にばらつきが生じる可能性もあるため、ファクタリングの利用を検討している法人は、支払期日にも留意してみましょう。
事業投資のための資金調達なら融資も検討する
法人が事業投資のために資金調達を検討している場合は、融資も検討してみましょう。ファクタリングは融資とは異なり、原資を増やすことを目的としたサービスではないからです。
法人が事業を行っていく中では、新規事業の創出や新しい設備の導入などを行うために事業投資を行うことがあります。事業投資を行う際は、会社が保有している資金のみでは費用が賄えないために金融機関からの資金調達が必要になる場合もあります。
ファクタリングは、商品やサービスをすでに提供していて、将来入金される予定の現金を早期に現金化する方法です。そのため、会社の手元に入ってくる現金の額を増やせるような資金調達方法ではないため、ファクタリングを利用しても事業投資を行えるほど資金繰りに余裕を得られないおそれがあります。
融資は金融機関から現金を借り入れる方法であり、会社が保有する現金の額が増えるため事業投資のために必要な資金を賄えるようになります。融資はファクタリングと異なり返済の必要がありますが、事業投資のために資金調達を検討している法人はファクタリングよりも融資を検討してみてください。
まとめ
法人がファクタリングを利用する利点として挙げられるのは、資金調達が行いやすいことです。個人事業主に比べて、売掛債権の金額が増加しやすかったり信用評価を受けやすかったりします。
ファクタリングは、売却する売掛債権によって買い取ってもらえる金額が変動します。信用力があったり、支払期日が近い売掛債権を売却することで、買取手数料を抑えられたり買取率が上昇したりする傾向もあるため、売却する売掛債権を選ぶ際の参考にしてみてください。
なお、ファクタリングは会社に入る原資を増やすことを目的とした資金調達方法ではないため、事業投資を目的とした資金調達手段には向いていません。事業投資を目的とした資金調達を行いたい法人は、金融機関への融資の申込みも検討してみましょう。