ビジネスを始めて最初の大きな感激は、大口取引を受注することです。
受注した日は祝杯を挙げたくもなるでしょう。しかし、手放しで喜ぶわけにはいかないのです。
ここで冷静に資金繰りについて考えなければいけません。
なぜ、初めての大口取引受注は手放しで喜べないのか?
ビジネスで新規取引を始めるにあたって、特に大口取引先ほど入金になるまでの期間が長い傾向にあります。
その場合、事前に資金繰りの問題点を把握することが大切です。主に以下について確認しておきましょう。
- 売上の見込み(月額)
- 入金サイト(月末締め翌月末払いなど)
- 仕入れ、外注費の支払い見込み(月額)
- 支払いサイト
- 在庫の必要月数(何ヵ月分の在庫が必要か)
- 固定費の増加(月額)
これらを確認してから慎重に対応しましょう。
利益が出ても現金がなければ資金ショート
ある取引で1,000万円の売上を計上したとします。この商品の仕入価格が700万円だったとします。すると粗利益は残りの300万円。
これがすべて現金での取引だったならば、手元に300万円が残ることになります。損益計算書にも1,000万円の売上と300万円の粗利益が計上されます。
しかし、1,000万円の売上が掛取引で、2ヵ月後に入金になるとしたら、どうなるでしょう。
取引が成立した時点では1,000万円の売上も300万円の粗利益も何も手元に入っていません。これでも損益計算書上では1,000万円の売上と300万円の粗利が計上されるのです。ここが大きな落とし穴。もし、700万円の仕入分の支払いが1ヵ月後ならば、資金がショートします。
では、この事例の場合、入金と支払いのサイトが逆ならばどうでしょう。
1,000万円の売上が1ヵ月後に入金になり、700万円の仕入分の支払いが2ヵ月後だとしたら、1ヵ月間資金に余裕が発生。取引を続ければ続けるほどキャッシュが増えていきます。このようなキャッシュリッチな会社がビジネスを永続できるのです。
営業活動は資金繰りの概念を視野に入れる
売上と利益ばかりに目がいくと、キャッシュフローに行き詰まり、経営が自転車操業のような状態にもなりかねません。
この事例の場合、売上が増えれば増えるほど、資金繰りが苦しくなります。売上や利益だけを重視していても、企業は存続できません。開業時に最も苦労するのは、資金繰りなのです。
資金繰りの概念を視野に入れずに営業活動を行うと、どんなに売上と利益が伸びても資金ショートを起こしてしまいます。これでは、やりたいビジネスを続けられなくなるのです。
利益を出すことは企業にとって大事なこと。
しかし、それ以上にキャッシュを生み出す力そのものを強化し、企業体力を増強する「キャッシュフロー経営」を意識する必要があります。キャッシュフローはすべての基本。中小企業が存続するには不可欠です。
まとめ
大口取引は企業にとってビッグチャンス。受注のためなら価格や入金サイトなど無理な条件でものんでしまいがちです。
しかし、受注によって資金繰りが厳しくなると、売れば売るほどキャッシュが足りなくなってしまい、ビジネスが続かなくなってしまう危険性があるのです。
大口取引こそ条件の確認をしっかり行い、慎重に進めましょう。