国内の人口減少から生じる問題として人手不足問題や年金問題を思い浮かべる人は多いかと思います。しかし、問題は中小企業の場でも起こっています。経営者の継承者不足問題です。現状としては、全体の66%である22万社が後継者不足に陥っています。
今回は中小企業の後継者不足問題に関して、現状と未来に向けた解決策について説明しようと思います。
1.中小企業の後継者不足問題の現状
2017年に株式会社帝国データバンクが実施した実態調査、「後継者問題に関する企業の実態調査」によれば、国内企業のうち66.5%が後継者不在な状況であることがわかりました。具体的にいえば、33万4000社のうち22万2000社が「後継者不在」と回答をしたそうです。
つまり、国内企業のうち3分の2は後継者がいないということです。
2.後継者不足問題の原因
(1)親族内に継承者がいない
家族経営の中小企業の場合、親族内継承が行われることが多いです。親族内継承とは会社の経営者の身内や親族が事業を引き継ぐことです。
親族内継承であれば、今までその会社で働いてきた経験がある上に親族に継承するため、継承をスムーズに進めることができるというメリットがあります。
しかし、いつでも継承者がいるとは限りません。近年では、晩婚化で子供がいない方や子供がいても事業を継承する意思のないケースが増加しています。
そのため、事業継承をすることが困難になり後継者不足問題となります。
(2)従業員に事業を引き継ぐことができない
経営者の親族に事業を引き継ぐ親族内継承に対して、親族外の第3者に事業を引き継ぐことを親族外継承と言います。
親族外継承の場合は、従業員が継承者になることが多いです。しかし、従業員であるからと言って事業を継承できる訳ではありません。従業員に事業を経営する素質や能力がない場合もありますし、本人にその意思がないことも多いです。また、個人経営の方の場合は従業員がいないため事業を引き継ぐ人がいません。
そのため、後継者不足問題に陥ります。
(3)事業の将来性が低い
会社の事業の将来性がない場合は事業継承が難しいです。将来その事業から利益をえることが難しくなるのなら、その事業を継承したいと考える人もいないからです。
(4)多額の負債を抱えている
多額の負債を抱えている事業の場合、継承が難しくなります。その負債が継承者にも引き継がれるからです。特にM&Aの場合は買い手がなかなか見つからず、後継者不足問題となることが多いです。
3.中小企業を後継者不足問題から救う方法
(1)外部からの優秀な人材を登用する
親族や従業員に後継者がいない場合、外部から継承者を雇う方法があります。それによって、経営的手腕に優れた人材を雇うことで、事業のさらなる成長に繋がることが期待できます。
ただし、会社に不安要素や多額の負債を抱えている場合は事業の継承を断られることもありますので注意が必要です。
(2)M&A
どうしても後継者を見つけることができない場合は、外部の会社に事業を買収してもらう方法があります。
M&Aを実施すれば、事業を買収側の会社が継承してくれるため事業の廃業を防ぐことができるため、従業員の雇用を損なわないというメリットがあります。
また、売却する側の経営者は売却によって売却益を受け取ることができます。
近年では、M&Aが中小企業の後継者不足問題を解決する方法として活用され、M&Aを専門としたサポート会社も数多く生まれています。
まとめ
中小企業は日本の経済を根底から支える存在であり、だからこそ後継者不足問題は日本にとって重大な問題です。そのため、後継者不足問題に悩んでいるという経営者の方であっても、できることなら廃業という事態は避けたいと考えているかと思います。
現在では多くのM&A支援業者が後継者不足に悩む経営者の支援を行っています。もしも、会社を経営している一方で、経営者が不在で困っているという方は専門家に相談してみるのも良いかと思います。