法人成りとは?必要な手続きやメリット・デメリットを解説

株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
資格の学校TACで財務諸表論の講師を5年行う。税理士事務所勤務を経て、平成23年より個人で融資サポート業務をスタート。
平成27年12月、株式会社SoLabo立ち上げ。
会社設立支援や資金調達支援など、これから起業を検討している方やすでに起業している経営者の皆さんを様々な角度からサポートしています。

有限会社はなぜ設立できないの?あなたが個人事業主の場合、事業拡大を見越して、会社を設立したいと思う段階があるはずです。

個人事業主が株式会社や合同会社などの会社法人を設立し、事業形態を「個人」から「法人」へ変更する「法人成り」を行うと、節税できると言われています。

この記事では、法人成りの基本を押さえつつ、法人成りを行う上でのメリット・デメリット、必要な手続きをご紹介します。

1.法人成りとは?

「法人成り」(ほうじんなり)とは、すでに事業を行なっている個人事業主が、株式会社や合同会社などの会社法人を設立し、事業形態を「個人」から「法人」へ変更することを指します。

将棋において弱い駒が別の強い駒の働きを行えるようになることを「成る」と呼ぶことから、事業形態が「個人」から「法人」に変化する様を「法人成り」と呼ぶようになったそうです。

法人成りを行うには、新しく設立した会社に土地や設備といった資産を移行し、それまで行なってきた事業を引き継ぐ必要があります。引き継ぐのは、個人事業主の時に所有していた「資産」だけでなく「負債」もです

資産は、個人事業主が所有していた預貯金のほか、固定資産である在庫や備品、土地や店舗などの建物・設備、機械、事業用の車両など、売掛金や貸付金などの金銭債権も含まれます。当然、事業そのものを引き継ぐ以上、取引先や仕入先、顧客との基本契約も引き継ぎます。

負債は、事業資金の借入金や、個人事業主が負う買掛金や未払金などです。また、設備や機材などをレンタルするようなリース契約など、個人名義で締結されている契約、事務所や店舗を賃借する不動産賃貸借契約なども含まれます。

一般的な会社設立は、個人事業主のときからの資産や負債は引き継ぎませんので、ゼロからのスタートになります。

法人成りを理解しやすいように、一般的な会社設立しての創業と法人成りの例を比べてみましょう。

通常、会社設立を行って創業する場合、事業に関して引き継ぐべきもの、所有するものは何もありません。会社設立後、必要な土地や設備など事業に関係するものの調達を行い、会社法人の名義にし、事業活動を始めるのが一般的です。

一方、法人成りの場合、個人事業主としてすでに行なっていた事業の土地や設備を所有しており、会社設立後、資産の移行をして名義替えを行うことで、事業形態を変更します。通常の会社設立での創業も、法人成りも、最終的には同じような手続きが必要になりますが、出発点とそこに到るまでの過程が異なるのです。

2.法人成りの3つのメリット

法人成りすることで、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。主なメリットは次の3つです。

①社会的な信用度が高くなり、事業展開がしやすくなる

②個人事業主と事業そのものの切り離しができる

③会社法人ならではの節税メリットを得られる

社会的な信用度が高くなり、事業展開がしやすくなる

一般的に、個人事業主よりも会社法人の方が社会的な信用があるとされます。個人事業主とは取引しないという企業もあるくらいです。

会社法人は登記を行うため、会社の所在地や資本金といった事業概要を公文書で確認することができます。個人事業主は、個人事業主から提供される情報を鵜呑みにするしかなく、反社会的勢力と関わりなどの反社チェックも困難です。

社会的な信用度が高くなれば、金融機関の融資も通りやすくなったり、個人事業主と取引しない取引先でも新たに取引をしてもらえたりするため、事業展開に有利だと言えるでしょう。

個人事業主と事業そのものの切り離しができる

法人成りをすることで、それまで個人事業主と、切っても切り離せなかった事業そのものとを切り離すことができます。簡単に言えば、仕事とプライベートの線引きができるようになるということです。

また法人成りに伴い、事業責任についても切り離しが可能です。

個人事業主は利益も借金もすべて自分が責任を負う無限責任ですが、株式会社や合同会社に法人成りすることで有限責任となり、責任を負うのは出資した範囲内のみに限られるため、万が一会社が倒産したとしてもすべての借金を背負う必要はなくなるでしょう。

また、事業を後継者に譲る「事業継承」や、事業の合併や買収(M&A)なども、個人事業主のケースは新たに開業届を出したり認可を再度取り直したりと手続きが必要になりますので、法人成りのほうがスムーズに事業を引き継ぐことができます。

他にも、会社法人であれば、決算月を任意で変えられるため、経理処理が繁忙期と重ならないようにするなどの柔軟な対応が可能です。個人事業主の場合、確定申告時期をずらす対応はできませんので、個人事業主と事業そのものの切り離しによるメリットと言えるでしょう。

会社法人ならではの節税メリットを得られる

法人成りによる節税メリットには5つあります。

① 累進課税率から比例税率になる

② 自身や親族の所得を経費にできる

③ 退職する時の退職金が経費にできる

④ 条件を満たせば、生命保険料や家賃を経費にできる

⑤ 条件を満たせば、最大2年度分、消費税が免除される

① 累進課税率から比例税率になる

個人事業主の場合、所得金額が大きくなると税率もそれに伴い高くなる「累進課税率」が適用されています。利益が出れば、その分、税率も上がるということです。

会社法人は、対象金額の大小には関係なく税率が決定する「比例税率」が適用されます。会社法人が中小企業の規模の場合、年間所得が800万円までは、法人税率15%と一定です。

② 自身や親族の所得を経費にできる

自身を社長として扱い、役員報酬を支払うと、その所得を経費として計上できます。会社法人の収益から、役員報酬分が経費として差し引かれるため、残った利益にだけ法人税がかかります。

役員報酬そのものにも「給与所得控除」があるため、最低65万円、最高220万円が税金の対象外とされ、控除されます。「給与所得控除」とは、給与所得者が、自身の給与から仕事に必要なものを買うものを予め経費として算出するものです。

法人成りをして所得を役員報酬として得るだけことで、2回の節税チャンスがあるのです。

③ 退職する時の退職金が経費にできる

個人事業主の場合、小規模企業共済制度などを活用しなければ退職金はありませんので、必要経費として計上することはできません。しかし、法人ではきちんと退職金が支払われるため、適正額であれば損金にでき、税金額が安くなります。

④ 条件を満たせば、生命保険料や家賃を経費にできる

個人事業主の場合、どんなに多くの額を保険料として支払っても、生命保険料の所得控除額は最大12万円です。

会社法人の場合、条件を満たせば、生命保険料が経費にできます。経費として計上するためには、契約者や保険金受取人が、社員や従業員を法人、被保険人として契約を結ぶ必要があります。

ただし、保険商品ごとに経費として計上できる金額が異なりますので、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

また、個人事業主は、事業で使用しているスペース以外は自宅の家賃を経費で落とすことはできません。しかし、会社法人は、法人が直接、自宅を借りたり購入したりすることで、その自宅を「社宅」にできます。家賃の半分以上を社長が負担していれば、社長自身には社宅分の所得税もかからず、残りの差額を会社法人の経費に計上することが可能です。

⑤ 条件を満たせば、最大2年度分、消費税が免除される

消費税は、前年度の前半6ヶ月分の売上を対象に、課税されます。そのため、1年目は、資本金1,000万円未満であれば、どの会社法人も消費税が免除されます。

ただし、次年度分も免除されるためには、次のいずれかの条件を満たす必要があります。

・設立1年目の前半6カ月の課税売上高が1,000万円以下

・設立1年目の前半6カ月の給与などの経費の合計額が1,000万円以下

・設立1年目が7カ月以下で、6ヶ月分の売上が存在しない

3.法人成りの3つのデメリット

法人成りすることのデメリットは次の3つです。

①会社法人の設立に費用がかかる

②社会保険の加入が必須となり、固定費の人件費が膨らむ

③個人事業主ならではのメリットを捨てる必要がある

会社法人の設立に費用がかかる

株式会社を設立する場合、25万円(電子定款なら21万円)以上の費用がかかります。合同会社の場合は、10万円(電子定款なら6万円)以上の費用がかかります。さらに会社設立の手続きを外部委託する場合には、別途追加で費用が必要です。

社会保険の加入が必須となり、固定費の人件費が膨らむ

会社法人は、社会保険(健康保険と厚生年金保険)への加入が義務付けられています。会社法人は、社会保険料の半分を負担することになっており、人件費が固定費として重くのしかかります。

社長ひとりだけの会社法人でも、個人事業主時代の国民健康保険料と国民年金の保険料を合わせた金額より、社会保険料の方が金額は高くなります。

しかし、その分、保障は手厚くなりますので、もらえる年金額は多くなり、遺族年金や障害年金なども充実します。

個人事業主ならではのメリットを捨てる必要がある

「稼いだお金は自由に使うことができる」、「赤字の場合の税金負担がない」、「事務作業の負担が少ない」といった個人事業主ならではのメリットを捨てる必要があります。

個人事業主にとっては、仕事とプライベートは分けられるものではなく、比較的自由にお金を使うことができました。しかし、会社法人ともなれば会社のお金と個人のお金が明確に分かれます。

まず、給与所得にあたる役員報酬は、決算日の翌日から3カ月以内に決定した「定期同額給与」でしか経費として認められません。給与は経費で落とせないと、会社法人の節税メリットにつながりませんので、次の決算を迎えるまでは毎月同じ額となり、稼いだお金を自由に使うことはできなくなります。

経費も自己判断で落とせなくなるため、「勝手に使えるお金」のようなイメージは完全に捨て去らなければなりません。

また個人事業主の場合、事業が赤字になれば、個人住民税として均等割りの年数千円程度の金額を支払えば問題ありませんでした。しかし、会社法人となると法人住民税を、均等割りの金額でも最低7万円は納税する必要があります。

さらに個人事業主は、確定申告のときだけ書類提出をすればよい程度の事務処理で済みましたが、会社法人となると会計処理や税務申告に関する提出書類が増え、処理も複雑になります。税理士に手続きなどを頼む場合は、その委託費用もかかることになります。

4.法人成りに必要な手続き

法人成りに必要な手続きは次の通りです。

1)会社法人を設立する

2)事業に関係する資産を移行する

3)個人事業の廃業手続きを行う

4)廃業手続き後、最後の一回の確定申告を行う

5)廃業後1ヶ月以内に事業税を納付する

会社設立の手続きそのものは、一般的な会社設立と同じように行えばいいですが、個人の資産を会社法人に移行する点と、個人事業を廃業する後処理が必要な点がポイントと言えるでしょう。

(1)会社法人を設立する

会社法人の設立は、法人成りであろうと特別な手続きはありません。一から株式会社や合同会社などの会社法人を設立する方法とまったく同じです。

会社法人の設立は主に5つの手続きが必要です。

① 会社設立の準備をする

② 定款の作成と認証をする

③ 登記書類を作成する

④ 会社設立登記をする

⑤ 開業の届出をする

詳しくはこちらをご覧ください。

https://inqup.com/category/company

(2)事業に関係する資産を移行する

会社法人の設立が完了したら、事業に関わる資産を全て法人に移し替える「資産移行」を行う必要があります。資産移行の方法には主に3つ、贈与、売買、現物出資があります。

贈与は、端的にいうとプレゼントです。自身の資産を無償で相手に与える意思を表示し、相手が受諾をすることによって「贈与」が成立します。個人が法人へ資産を贈与し、名義変更が行われ、資産移行できます。

売買は、字の通り、金銭的な売り買いです。自身の資産を相手に移転する約束をし、相手がその代金を支払う約束をすることで「売買」が成立します。個人が法人へ資産を売って、法人が買い取ることにより、名義変更が行われ、資産移行できます。

現物出資は、物々交換のようなものです。自身の資産と、同程度の価値を持つ相手の資産と交換する意思を表示し、お互いが受諾をすることによって「現物出資」が成立します。法人側の資産として、株式を活用するケースが多いようです。

それぞれ、手続きの難易度や、税法上の取扱いが変わります。資産移行も時間がかかるものであるため、会社設立を始める前に、事前に税理士などの専門家に相談するとスムーズにいくでしょう。

また、取引先や顧客と結ぶ契約関係も、法人へと名義変更する必要があります。忘れずに行いましょう。

(3)個人事業の廃業手続きを行う

資金移行が完了したら、個人事業の廃業手続きです。廃業手続きを行わないと、法律上は「個人事業とは別に、類似する新会社を設立した」という扱いになり、法人成りとはなりませんので、注意しましょう。

次の書類を、所轄の税務署に提出します。

◇「個人事業の開業届出・廃業等届出書」

※ 所得税に関する届出なので、全員提出(必須)

◇「予定納税額の減額申請書」

※   法人成りで個人所得が下がるため、税務署から通知される予定納税額を減額してもらいたい場合に提出(7月または11月)

◇「青色申告の取りやめ届出書」

※ 確定申告で青色申告をしていた場合のみ提出

◇「事業廃止届出書」

※ 個人事業に関する消費税を支払っていた場合のみ提出

◇「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」

※ 従業員などを雇い、給与を支払っていた場合のみ提出

次の書類を、所轄の都道府県税事務所に提出します。

◇「事業廃止(廃止)等申告書」

※ 事業税に関する届出なので、全員提出(必須)

※ 都道府県事務所によっては、書類の名称が変わる可能性があります

(4)廃業手続き後、最後の一回の確定申告を行う

資産移行が完了し、個人事業の廃業手続きが完了していれば、法律上は「法人成り」ができたことになりますが、その年度の個人事業主としての所得税の納付がなくなる訳ではありません。

個人事業主として最後になる確定申告をする必要があります。この確定申告で、資金移行での贈与や売買などで得た所得も計上もするため、いつも通りにはいかないことも覚えておきましょう。

(5)廃業後1ヶ月以内に事業税を納付する

所得税のときと同様、廃業手続きを完了しても、その年度の個人事業税の納付がなくなる訳ではありません。所得税の確定申告とは別に、廃業後1ヶ月以内に、事業税の申告の必要です。

事業税は確定申告の後、一般的には8月頃に通知されます。最後の個人事業主としての確定申告が完了してからの支払いになるため、事業税を経費として処理できない、という困ったことになってしまいます。

救済として、特例があります。廃業した年度の所得税の確定申告に、その年度の事業税を見込んだ金額を経費として計上できるのです。

確定申告の前に、税理士などの専門家に相談しておくとよいでしょう。

まとめ

法人成りは、すでに事業を行なっている個人事業主が、会社法人を設立し、資産移行を行い、事業形態を変更することです。少しでも節税したい、または自身が生み出した企業を世に何らかの形で残したいと願う個人事業主なら、法人成りは避けて通れない道だと言えるでしょう。

思い立ってすぐ法人成りができるというものではないため、法人成りを行う必要性が見えた段階で、専門家に相談するようにしましょう。

◆融資って何?

そもそも「融資」って何ですか?融資が何か詳しくご紹介します!

 

◆融資って経営・独立に必要?

融資って経営・独立に必要?

 

◆初めて融資を受ける場合は、何をすればいいの?

はじめての融資!融資を受ける準備は何をすればいい?

 

◆多くお金を借りるためにはどうしたらいい?

日本政策金融公庫から融資で1円でも多く、融資金額を引き出す方法とは?!

 

◆金利は何パーセントになるの?

日本政策金融公庫の金利計算をシミュレーション!金利が0.1%変わると返済金額はどう変わるのか?

 

◆返済期間はどれくらい?

創業時に日本政策金融公庫でお金を借りる場合の返済期間は、5年以上!?

 

◆政府系金融機関の日本政策金融公庫って借りやすいの?

日本政策金融公庫を利用する8つのメリット1つのデメリット

 

◆制度融資って何?

低金利融資で資金調達!「制度融資」ってなに?

 

◆保証協会付の融資って何?

創業者にとっても味方である、信用保証協会とは?

 

◆創業時はどの融資制度が良い?

創業融資なら日本政策金融公庫か信用保証協会の制度融資のどちらが良い?

 

このようなお悩みを解決するために、創業融資ガイドでは、1つ1つ丁寧に資金調達について開設しております。

ぜひ、皆様の創業・独立開業・経営にご活用ください。

 



会社設立を安く最短でミスなく行いたい方へ

月間問合件数200件 会社設立全部おまかせ

下記の条件に1つでもあてはまる方は、ぜひお気軽にご相談ください。

  • いつ起業、会社設立するか、具体的な日時が決まっている (3ヵ月以内)
  • すぐにでも事業を始めたい
  • どんなサービスで事業を始めるか、ある程度決めている
  • 合同会社と株式会社、どちらにするか迷っている
  • 正直、書類作成はなるべくやりたくない、やる時間がない
  • 経営、会計について相談できる人が身近にいない

会社設立サポートサービスには以下のようなメリットがあります。

  • 100件/月以上の相談に対応する専門コンサルタントが
    無料相談でヒアリングの上会社設立に必要な手続きや、適した会社形態をアドバイスします。
  • 自分でやると80時間以上かかる手続きが、
    1~2時間のヒアリングと、打ち合わせ場所への移動時間で完了します。
  • 専任担当者が代理として手続きするので、法務局に行かなくてすみます。 
    (※一部地域を除く)
  • 電子定款で手続きをするので、収入印紙代などの約3万円以上を節約できます。
  • 専門コンサルタントが会社設立後も全力でサポート!節税のポイントを伝授します。

起業者支援の専門家に相談してみませんか?