許可がないと事業が始められない。運送業許可を取得するために必要な「ヒト」「モノ」「カネ」の要件について

株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
資格の学校TACで財務諸表論の講師を5年行う。税理士事務所勤務を経て、平成23年より個人で融資サポート業務をスタート。
平成27年12月、株式会社SoLabo立ち上げ。
会社設立支援や資金調達支援など、これから起業を検討している方やすでに起業している経営者の皆さんを様々な角度からサポートしています。

他者から依頼を受け、トラックで荷物を運んで対価を得る「運送業」。

法律で許可なく始めてはいけない事業となっており、運送業を始めるには申請を行い、運送業許可を取得したり届出をしたりする必要があります。さらに、運送業の許可を得るためには、満たさなければならない要件があります。

この記事では、運送業の基本と、運送業許可を取得するために必要な要件を「ヒト・モノ・カネ」の観点からご紹介します。

1.運送業とは?

「運送業」は、個人や企業など他者からの依頼を受け、トラックなどの車両で荷物を運び対価を得る業態です。貨物自動車運送事業法という法律で、そのあり方が定められています。

法律上、運送業は次のように定義されています。

第二条 この法律において「貨物自動車運送事業」とは、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業及び貨物軽自動車運送事業をいう。

2 この法律において「一般貨物自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。次項及び第七項において同じ。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。

3 この法律において「特定貨物自動車運送事業」とは、特定の者の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業をいう。

4 この法律において「貨物軽自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る。)を使用して貨物を運送する事業をいう。

貨物自動車運送事業法:電子政府の総合窓口e-Gov より一部抜粋)

ポイントとして押さえておきたいのは、法律上、運送業を定義する要素は次の3つを満たす必要がある、ということです。

① 他人の依頼で運ぶ

② 対価をもらう

③ 自動車を使う

「運ぶ」行為がすべて「運送業」に該当するわけではない、という点を理解しておきましょう。

例えば、自分の会社で作った商品を取引先に納品するためトラックで運ぶ行為は運送業には該当しません。また、他者の荷物を運ぶけれど運賃が発生しないケースも運送業にはあたりませんので、運送業許可を取る必要はありません。

これに当てはまれば、運送業許可が不要!?どんなときに運送業許可が必要か?

また、運送業には、主に顧客の違いや車両の違いから、3種類に区別されます。

一般貨物自動車運送事業事業用の自動車のみ使用、顧客は複数
特定貨物自動車運送事業事業用の自動車のみ使用、顧客が特定の1社
貨物軽自動車運送事業軽貨物自動車や125cc以上のバイクのみ使用

これらの運送業を始めようと思ったら、国土交通大臣または地方運輸局長の許可を受けなければなりません。そして、その許可を受けるためにはさまざまな要件を満たす必要があります。

2.運送業許可を取得するために必要な要件

運送業許可を取得するためには、申請者自身やドライバーなどの「ヒト」の要件、車両や事務所などの「モノ」の要件、運送業を開始するための十分な資金が確保できているかの「カネ」の要件、この3つの要件を満たす必要があります。

一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業、貨物軽自動車運送事業ではそれぞれ要件が異なりますので、ご自身が取得予定の運送業の要件について必ず確認しておきましょう。

事業種類ヒトモノカネ
一般貨物自動車運送事業運転者5名運行管理者1名

整備管理者1名

兼任含めて最低でも6名以上

事務所の立地や、休憩室の設置、事務所から車庫までの距離などの施設の条件あり緑ナンバーの事業用車両5台以上600万円〜1,200万円以上

※事業規模によって変動

特定貨物自動車運送事業要件なし
貨物軽自動車運送事業運転者1名以上

運行管理者や整備管理者の確保は必須条件ではない

黒ナンバーの軽車両1台以上

(1)一般貨物自動車運送事業の場合

一般的に運送業というと、「一般貨物自動車運送事業」を指すことが多いです。一般貨物自動車運送事業の許可を取るためには、事業を適正に運営できるよう体制を整える必要があります。

ヒトの要件:最低限必要な人員数

最低限、運転者(ドライバー)5名と運行管理者1名、計6名の人員が必要です。整備管理者も1名必要ですが、運行管理者や運転者が兼任しても構いません。なお、運行管理者はドライバーを兼ねてはいけませんので注意しましょう。

一般貨物自動車運送事業の人の要件

ドライバーは事業用の車両を使用し、運送業務を行います。ドライバーの人員数にアルバイトを含めることはできませんが、2か月以上雇用する契約を結べば、派遣社員や出向社員、パートでも認められます。

運行管理者は、運送業務の安全を確保するため、ドライバーの指導教育や点呼などを行います。運送業運営を行う管理側であるため、ドライバーとの兼任はできません。運行管理者になるためには、運行管理者基礎講習を受けて運行管理者試験に合格する必要があります。

運行管理者について|国土交通省ホームページ

整備管理者は、事故防止のため車両の点検や整備記録の管理などを行います。ドライバーや運行管理者が兼任可能です。自動車整備士3級以上の資格を持っているか、運送会社などでの整備管理経験が2年以上あることが証明でき、整備管理者選任前研修を受講すれば、整備管理者として認められます。

点検・整備の推進|国土交通省ホームページ

②モノの要件:用意すべき施設・車両

モノの要件として、「事務所」「休憩室・睡眠室」「車庫」「車両」の要件を満たさなければなりません。

第一に、事務所、休憩室・睡眠室、車庫、どの施設も、建物の使用許可が証明できる必要があります。賃貸の場合は賃貸借契約書、自己所有の場合は登記簿謄本などで証明可能です。

また、運送業の事務所の建物には、いくつか制限があります。一般的に、事務所のある建物に、休憩室と睡眠室も作られるため、この2つにも共通の制限になります。

・車庫から5〜20km(地域によって数値は変動)以内にあり、市街化調整区域と呼ばれる場所にない

・市街化調整区域にある場合、都市計画法に準ずる

・農地法に違反した建物でない

・建築基準法、消防法などのその他の法律に違反する建物でない

簡単に言えば、運送業の事務所はトラックなどが出入りするため、場合によっては都市景観を損ねます。「都市計画をきちんと守って、運送事業をしよう」ということです。

車庫の立地も、当然、事務所から5〜20km(地域によって数値は変動)であることが求められます。車庫が屋根付きの場合、市街化調整区域にないこと、農地でないこと、合法な建物であることなど、制限があります。

屋根付きでない車庫であれば、特に制限はありません。

また車庫の出入口については、次のような事項が定められ、事故が起こりやすい要因を排除することが求められます。

・5m以内に交差点、踏切などがない

・10m以内に横断歩道、陸橋、急カーブなどがない

・200m以内に保育園や学校など児童の行きかう場所がない

同様に、車庫の出入口の前の道路にも制限が付きます。

・双方向通行の道路なら5.5m以上あること

・一方通行の道路なら2.5m以上あること

必要な道路幅は、運送業に使用する車両の積載量によって変動します。トラックが通るのに十分な幅があることを道路幅員証明書で証明する必要があります。

 

施設の次は車両です。

緑ナンバーとして登録予定の事業用の車両が最低5台以上必要です。この5台の中に軽自動車は含むことができませんので注意してください。

さらに、この事業用の車両が適切に使用できることを証明する必要があります。契約書など証明できる書類があれば、申請時に実際に車両が車庫になくても問題ありません。

【車両の使用権を証明できる書類】

自社で保有している車両の場合・・・自動車検査証(写し)

新たに購入するの場合・・・車両売買仮契約書(写し)など

第三者や他の法人から無償で車両をゆずり受ける場合・・・譲渡契約書(写し)など

リースやローンで事業用の車両を用意する場合・・・契約期間がおおむね1年以上のリース契約書(写し)

③カネの要件:最低限必要な資金額

運送業を始めるための資金と、運送業スタート後の当面の資金を準備していることを証明しなければなりません。資金を保有していることを証明するには、銀行など金融機関が発行する「残高証明書」が必要です。

運送業許可申請書に添付する「事業開始に要する資金及びその資金の調達方法」で、次のような資金の必要項目を確認し、運送業開始後の事業計画書を作成します。この事業計画書を作成することで、最低限必要な資金の額が算出できます。

車両費取得価格またはリースの場合は借料6か月分
事務所や車庫などの不動産費用取得価格または賃貸の場合は賃料6か月分
役員報酬、従業員の給与などの人件費2か月分
トラックのメンテナンス費や燃料代2か月分
自賠責保険料や任意保険料などの保険料1年分
自動車税や、自動車取得税などの各種税金1年分
その他費用(事務用品費、水道光熱費その他の諸経費)2か月分

自身の資産として、条件を満たす事務所や車庫などの不動産を用意できているとしても、最低でも600万円、多ければその倍の資金が必要となるでしょう。車両の数や車両の調達方法、事務所や車庫の調達方法などを含めた事業規模によって必要な資金額は変わるので、注意してください。

(2)特定貨物自動車運送事業の場合

特定貨物自動車運送事業に必要な要件は一般貨物自動車運送事業とほぼ同じですが、資金の要件がありません。

ただし、特定貨物自動車運送事業は、業務の範囲が次の場合に限られています。

・単数かつ特定の顧客の総輸送量の80%以上が確保できる

・運送契約の締結および運送の指示を直接行なっており、第三者の介入がない

つまり、新たに他の顧客と契約して運送業務を行うためには、一般貨物自動車運送事業の許可申請を行わなければなりません。そのため、特定貨物自動車運送事業の許可ではなく、はじめから一般貨物自動車運送事業の許可を取得するのが一般的です。

(3)貨物軽自動車運送事業の場合

先ほど説明した一般貨物自動車運送事業と特定貨物自動車運送事業とは違い、貨物軽自動車運送事業を行うために許可ではなく「届出」が必要です。そのため、他の2つの運送業よりも事業を始めるための要件はゆるくなっています。

ヒトの要件:最低限必要な人員数

最低限、運転者(ドライバー)1名が必要です。運行管理者、整備管理者の確保は必須条件ではありません。

②モノの要件:用意すべき施設・車両

用意すべき施設の要件は他の2つの運送業と共通ですが、自宅を営業所として使用することも可能です。

また、車両については、軽トラックのような軽貨物自動車や125cc以上のバイクのみが事業用車として認められており、1台以上あればOKです。

③カネの要件:最低限必要な資金額

特定貨物自動車運送事業は、届出制のため、自己資金の条件は特に設定されていません。ただし、事業を運営することには変わらないため、次の費用は最低限用意しておくとよいでしょう。

事務所や車庫などの不動産費用取得価格または賃貸なら賃料1年分
役員報酬、従業員の給与などの人件費2か月分
車両のメンテナンス費や燃料代2か月分
その他費用(事務用品費、水道光熱費その他の諸経費)2か月分

他の2つの運送業と比較すると、まず自分ひとりで事業を始めることができること、車両の取得にかかる費用やメンテナンス費用は比較的安く済むこともあり、自己資金が少なくても、特定貨物自動車運送事業はスモールスタートできます。ただし、事業を行っていく上で、最低300万円程度は資金を準備しておくとよいでしょう。

【軽貨物運送業開業融資】軽貨物運送業で300万円の融資に成功した事例

運送業許可を取るために融資は受けられるの?

車両を5台用意したり、ドライバーを雇用したり、資金を貯めたりと、一般貨物自動車運送事業の許可を取るためには厳しい要件をすべてクリアしなければなりません。そのため一般貨物自動車運送事業を始めるには1000万円以上の資金がかかるケースがほとんどです。

当サイトを運営している株式会社SoLaboでは、日々お客様からお問い合わせをいただきますが、「運送業許可を取るために日本政策金融公庫から融資を受けられますか?」とご質問をいただくことがあります。

結論からいうと、運送業許可を取るための融資は受けられません

そのため、一般貨物自動車運送事業の許可を取得するには、売上を伸ばしコツコツと計画的に資金を貯めていくしかないのです。

しかし、ご状況によっては提案できることがあるかもしれませんので、「融資はダメなんだ…」と自分で判断して諦めずに、まずはお気軽にご相談ください。

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まとめ

運送業の中でも、一般貨物自動車運送事業や特定貨物自動車運送事業の許可を取得し事業を始めるには、ヒトの要件として最低6名の人員、モノの要件として適切な施設と車両5台以上を揃えること、カネの要件としては目的別に最低限の資金を用意することが必要です。

一方、貨物軽自動車運送事業は、運転者1名以上、事業車両1台以上用意できれば届出をすることで事業を開始することができます。

潤沢な資金があれば別ですが、要件の厳しい一般貨物自動車運送事業でいきなり開業しようとするのは現実的ではありません。まずは貨物軽自動車運送事業でスタートし、売上をたてて実績をつくることから始めるとよいでしょう。

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