日本の会社には株式会社と、合同会社、合資会社、合名会社の4つの形態があります。
合同会社、合資会社、合名会社の3つをあわせて、持分会社と呼ばれます。
株式会社は、株主の出資によって成立し、株式を通じて資本を調達する会社形態です。株主の責任は出資額に限られ、経営参加の程度は株式の保有比率によって異なります。
持分会社(合資会社や合名会社など)は、特定の社員が直接資金を出資し経営に参加する会社形態です。社員は会社の借入金などに対して個人の資産を担保にする責任を負い、利益は出資比率に応じて分配されます。
当記事では、会社設立にかかる費用について、株式会社と持分会社での違いを説明します。
また、個人事業主が法人成りする場合の費用についても解説します。
会社設立にかかる費用について参考にしてみてください。
会社設立にかかる費用について株式会社と持分会社での比較
会社設立にかかる費用は会社形態に問わず、法定費用・設立手続きにかかる費用・資本金によって成り立ちます。株式会社では約25万円~、持分会社では約11万円~が設立に関係する費用相場です。
【会社設立に必要な費用】
費用名 |
費用項目 |
株式会社 |
持分会社(合同会社・合資会社・合名会社) |
---|---|---|---|
法定費用 |
定款認証手数料 |
資本金の額により変動 |
不要 |
定款印紙代 |
4万円 |
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定款謄本代 |
約2,000円(1ページ250円×ページ数) |
不要 |
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登録免許税 |
15万円または資本金額×0.007どちらか金額が高い方 |
6万円または資本金額×0.007どちらか金額が高い方 |
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その他諸費用 |
会社用の印鑑作成費用 |
約7,000円~8万円前後 |
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印鑑証明書の発行費用 |
一通450円(オンライン請求・郵送の場合 一通410円) |
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登記簿謄本の発行費用 |
一通600円(オンライン請求・郵送の場合 一通500円) |
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専門家報酬費用 |
約5~20万円(依頼範囲、専門家等によって異なる) |
||
資本金 |
1円~(会社により異なる) |
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合計 | 約25万円~ |
約11万円~ |
法定費用は定款が関係する株式会社の方が大きくなる
法定費用は定款認証の有無によって異なり、定款認証が必要となる株式会社の方が費用負担が大きくなります。
定款認証とは、会社の運営や組織に関する基本的ルールを記載した定款を公証役場にて公証人に認証をしてもらうことを言います。
株式会社は、会社の所有者と経営者が分かれているため、作成した定款は必ず認証してもらう必要があります。一方で、会社の所有者と経営者が同一の持分会社は、公証人による認証を受ける必要はありません。
なお、定款自体の作成は株式会社、合資会社のいずれも必要です。また、法人としての登記を行うための登録免許税も、株式会社と合資会社のいずれも発生します。
登録免許税は、株式会社で15万円または資本金額に0.007を掛けた金額のいずれか高い方、持分会社は、6万円または資本金額に0.007を掛けた金額のいずれか高い方が必要です。
その他費用は大きな違いはない
設立手続きでは、印鑑証明や登記簿謄本などの書類の準備が必要になりますが、各種書類の発行にかかる費用には、株式会社と持分会社で大きな違いはありません。
法人印鑑を作成する場合、会社代表の押印であることを証明するために登記申請を行う際に代表者印(会社実印)の登録を行わなければならず、代表者印の作成は迅速に行いましょう。
代表者印のほかに、銀行印・角印・ゴム印といった4種があり、3本または4本セットで売られていることが多く、材質やサイズ等によって印鑑作成の費用が変わります。
定款認証の際に設立手続きを行う発起人全員の個人実印の印鑑証明書が必要であり、法務局では少なくとも1通が必須です。窓口にて発行を行うか、オンライン請求または郵送によって印鑑証明書の発行費用が異なるため注意しましょう。
なお、法務局にて発行する登記簿謄本(履歴事項全部証明書)は金融機関にて会社名義の口座を開設する際などに必要です。ほかにも会社によっては司法書士等に設立手続きの代行を依頼する際の専門家に支払う報酬費用がかかるため会社設立に必要な費用を計算して明確化することが重要です。
資本金は株式会社と持分会社で大きな違いはない
2006年の法改正によって資本金の最低金額が撤廃されたことから、会社形態によっての最低金額はなくなりました。そのため、資本金額については、自由に設定することが可能です。
資本金は会社の事業を運営するための費用として使うことが可能であり、設立後の一定期間売上がなくても資本金によって安定した会社経営ができるように賄える金額が必要です。
経営状況が赤字であっても一定額納めなければならない税金を含む「固定費(維持費)」と事業に必要な設備を投資する等の「初期費用」、会社の生産量や売上高によって変動する「変動費」の約3か月分の金額を算出してみましょう。
なお、会社設立時の資本金が1,000万円以下の場合、事業者の納税事務負担等の配慮から消費税の納税義務が免除されます。また、設立手続きの際にかかる定款認証手数料や登録免許税は資本金が高くなると納める額が増えることも念頭に資本金の額を決めましょう。
【会社設立後に必要な維持費用(例)】
・税金(住民税均等割)
・社会保険料
・専門家報酬費用
・事務所や店舗の賃料
・設備投資費
・広告宣伝費
・通信費
・消耗品費
・人件費
法人成りした場合でも通常の会社設立時と同じ費用はかかる
個人事業主から法人成り(法人化)した場合でも、通常の会社設立時と同じく定款認証や登記申請が必要のため、最低でも株式会社では約25万円、合同会社を含む持分会社では約11万円の設立費用がかかります。
「法人成り(法人化)」とは、開業して事業を運営していた個人事業主が設立手続きを行い、株式会社や合同会社といった法人に事業を変更することです。
個人事業主が個人で行っていた事業を、新たに法人を設立して引き継ぐ際に、所有していた備品等の資産や債権・債務の移行手続きを行わなければなりません。設立後、資産を売買契約や貸し出しといった引き継ぎを行うほか会社名義の銀行口座(法人口座)の開設や各契約の名義変更も必要です。
【個人事業の廃業手続きに関する書類 例】
・個人事業の開業届出・廃業等届出書
・青色申告の取りやめ届出書
・事業廃止届出書
・給与支払事務所等の廃止届出書
・事業廃止申告書
また、個人事業主から法人成りをする場合、法人として事業を運営するため、個人事業を廃業する必要があり、廃業した日から1か月以内に「個人事業の廃業等届出書」等を提出し、個人事業を廃止したことを税務署等に通知しなければなりません。ただし、事業の一部を個人事業主として継続する場合や個人の不動産を法人に対し貸し付けるなどで不動産所得が発生する際は廃業手続きに関する書類を提出する必要はありません。
なお、法人を設立せずに個人事業主で開業する場合は、会社を設立しないため手続きにかかる手数料や登録免許税といった法定費用がかからず開業届等を税務署に提出すれば事業を始められます。個人事業主が会社を設立する際の費用面などのメリット・デメリットが知りたい人は、「個人事業主が会社を設立する際のメリットデメリットを解説」を見てみましょう。
まとめ
会社設立にかかる費用は株式会社や合同会社などの持分会社など会社形態を問わず、法定費用や設立手続き時に必要なその他諸費用、資本金があります。最低でも設立手続き費用に株式会社は約25万円、持分会社の場合約11万円が必要です。
株式会社は持分会社に比べ、守るべき法律の規制が多く設立手続きに手間がかかりますが社会的に信用が高い傾向があります。
一方で、合同会社などの持分会社は株式会社に比べて社会的な信用度が劣り資金調達の方法に限りがありますが、設立費用が抑えられ手続きにかかる手間が減り会社の所有者と経営者が同一のため経営の自由度が高いです。
また、個人事業主から法人成りする場合でも一から会社設立をする費用と手続きは変わらないため、株式会社と合同会社のメリット・デメリットを比較してどちらがいいのか判断しましょう。